セブンルールで共演している長濱ねると本谷有希子の対談がミモレに掲載されていましたので、ご紹介というか、丸々転載しました。セブンルールは5人のMCがいて、それぞれ一癖も二癖もありそうな面々が自立した若い女性の活躍を見て好き勝手いう番組です。そんな番組なので昨年の七夕の日にこれまた一癖ありそうな若林正恭が突如MCを去り、代わりにアイドルの長濱ねるとミュージシャンの尾崎世界観が登場してきた時は非難囂々でした。
周りがYOUを筆頭に本谷有希子と青木崇高という曲者揃いですから、チャラチャラした21才のアイドルや世界観という名前を名乗る35才のミュージシャンなんかでは太刀打ちできないだろうという非難だったのだろうと思います。何しろ女性陣が歯に衣を着せす何でもズバズバ言うYOUと、ただでさえ気難しそうな芥川賞作家本谷有希子ですから格が違うとみなされても致し方ありません。そんな本谷有希子と長濱ねるの対談ですから興味津々です。
1⃣ 人生、おしゃれ、そしてこれから
誰もが身体に埋め込んだデジタル機器によって生活からエンタメまでをまかない、人間の思考を全てがAIに代替できるほど没個性が進んだ近未来で、その状況を楽しみながら子育てする母親推子(おしこ)。作家本谷有希子さんの新刊『あなたにオススメの』は、人間のデジタル化が当たり前になった時代を描いています。本を読み「そんな世界のほうが、もしかしたら生きやすいんじゃないか」と語るのは、テレビ番組「セブンルール」で本谷さんと共演中のタレント、長濱ねるさん。常に型破りな作品を発表し続ける本谷さんの創作の秘密に迫ります。
<長濱>本谷さんの、私には思いつかないようなことや、スパンと的を射たことをおっしゃる姿にあこがれています。番組で、建築会社で働く女性が「女性らしさを生かして仕事をしている」みたいなことをおっしゃったときに、「男性社会の中の唯一の女性としてやってきたから、そういうところに固執してしまうんだろう」とおっしゃっていたじゃないですか。
<本谷>「細かい塗装の汚れに気づくのは女性ならでは」というような話だったから、「それは性差じゃなくて個人差。気づく男性もいれば気づかない女性もいっぱいいるんだし、それを女性ならではって強調するのはもうよくない?」って話をたしか、したんですよね。
<長濱>ああ、そうだなって思いました。そういう「確かに!」っていうことが毎週あって、本谷さんはどういう風な世界を見ているのかなって。
<長濱>ちょっと前に、SNSの世界を書いた本谷さんの『静かに、ねえ、静かに』を読みました。めちゃくちゃ不気味でした。SNSに依存してるというか、操られているというか。私も周りでもそれは当たり前の光景だし、自分自身もそうなってしまっていないかなと自問しました。この間、知人がインスタのストーリーズで、風景写真に「#人生最高」って載せてたんです。
<本谷>ははは。
<長濱>すごくポジティブな感じで「好きなように生きられて幸せ」って。私はそれを見てちょっと落ち込んで、その後、その子に会った時にも悩み相談とかネガティブな話題ばかりの自分に申し訳なくなって「私といるとマイナスに引き込んじゃうよね」って謝ったら、「いや、ハッピーもしんどくなるよ」って。当たり前ですが、SNSに載せていることが本心とは限らないし、生活のすべてでもないと。私のように見ている側が一喜一憂していることとか、本谷さんにはどう見えているのかなって。
<本谷>そもそもSNSって、比較するツールだもんなあ。自分がすごくハッピーならプラスに使いこなせるけど、そうじゃない大多数の人にとってはマイナスでしかないと思っています、私は。やっぱり比較して軽く落ち込んだり、「何か足りてないのかな?」って常に不安になりますよね。だから、私は見ません(笑)。
<長濱>「いいね!」の数を増やしたくて、最近では「性的搾取されてもいい」っていう女の子達がすごく増えているような気がして。もしかしたらきっと性的搾取などそこまで考えてないかもしれません。露出の多い服を着て「いいね!」とかフォロワーが増えたら、それはそれでいいじゃん、って言う。お仕事としてではなく一般の未成年の子たちが、危険を認識せずに軽い気持ちで世界中に発信してしまうことがどうにか改善されるといいなと思ったりします。
<本谷>例えばそういう性的搾取に対する嫌だなと思う感覚は、今のところは正常だし、きっと彼女たちにも「これでいいのか」っていう疑問も心のどこかにはあると思うんですよね。でも、それをそのまま小説にしてもつまんないなと思っていて。彼女たちがどういう思考で「見せてもいいじゃん」って言い切っているのか。一切の疑問がなく、めちゃくちゃハッピーだって言ってる女の子の価値観ってどんな感じなんだろう、その子の目から見えているこの世界とか社会とか男性ってどんな感じなんだろう、って想像して書くのが、自分の中では創作の醍醐味です。自分から遠ければ遠い感覚ほどいい。
<本谷>だから、どうなのかなと思うようなことを一回全力で肯定して見るんです。でも二重肯定って否定だったりするじゃないですか。文章でも「うんそうだよね、わかるわかる」って2回書いた時点で、違うことに思えるとか。
<長濱>書き出す時ってある程度流れを全部決めて書き出すんですか? こういうことを伝えたいっていうのを念頭において書き出すんですか?
<本谷>一行先も見えてないです。むしろ「こういうことを伝えたい」と思いついたことは、片っ端から捨てるようにしてます。人間が「伝えたい」って思うことなんて、ほとんどが大したことじゃないってのが、自論で(笑)。だったらあえて、伝えようと思っていないことを選ぶ。自分の中には共感への興味がないし、作者の意図から外れたものの方が小説はどんどん面白くなると思っています。とはいえ、まったく心にもないことは書けないんです。書いていくことで潜在的に思っていたことを探っていくという作業かな。ただただ、「知らない光景が見たい」という欲望なんですよね。
<長濱>すごい衝撃です。共感に興味がなく、知らないものが見たいというのが。
<本谷>「今の社会で子育てするのって苦しいよね、大変だよね」と書いて誰かに共感してもらうよりも、今の自分には到底理解できないような価値観、「子供をネット漬けにするのが何よりも幸せ」と言っている人の感覚の方を書きたいと思ってしまいます。
<長濱>『あなたにオススメの』も、だからこういう話になったんですね。
<本谷>この小説の設定は一応今から10年後。近未来です。例えば登場人物の名前が「推子(おしこ)」とか「肚(はら)」とか、現在の固有名詞として絶妙にない名前を選んでいるのは、この小説が現実とどれくらい乖離しているかをうっすら示す指針になるかな、と。人物の名前や固有名詞を創作することで、現実と小説の距離感、関係性を少しずつ決めていっているような感覚です。
<長濱>そのずらしがすごい絶妙で、ずーっと不気味な違和感がある感じでした。
<本谷>「渇幸(かつゆき)」とか絶対にないであろう名前をつけることで、「これはフィクションですよ」っていうことを示しているんだけれども、そういう世界観で油断してもらっているうちに、その人が自分の中の生々しいものと直面したら面白いですよね。昔はある種のリアルはリアルに書かなければ近づけないと思っていたけれど、今は、嘘を混ぜることによってしか浮かび上がらないリアルもあるな、と思っています。
<長濱>ふたりのママが出てきますよね。どこか自分に近いところってありますか?
<本谷>多分両方とも自分の中にあって、それぞれの感情をそれぞれの人格に置き換えてる感じかな。「子供をデジタルから遠ざけたい、自然に触れて欲しい」とも思うし、「デジタルから遠ざけたいって思ってるのも面白くない」っていうのも私。どちらの言い分にも加担するつもりはないし、どちらが正しいと書くつもりもない。作品の中では「子供は生まれた瞬間からネット漬けにする」人が多数派で、「子供はもっと子供らしく自然の中で遊ばせる」というのが少数派。 本当なら、少数派の言葉こそ真実、のように書くこともできるけど、今の時代の状況は本当に複雑で答えがないと思うから、「どちらも間違っているんじゃないか?」という視線を忘れないようにしています。
<長濱>両方とも「自分が正しいのか?」ってことを自問している感じが、今お話を伺ってすごく腑に落ちました。なるほどって。
<本谷>世の中って答えのないものばかりだから、そこにあえて答えを出さないようには気をつけていますね。
<長濱>ひとつ聞きたいことがあるんですが。
<本谷>ひとつじゃなくて、撮影の時からいくつも聞かれてるよ(笑)。
<長濱>本谷さんは「人」が好きですか?
<本谷>好きじゃなかったはず。昔は集団行動はできないし、 誰とも目を合わせない、挙動不審な人物と認知されてたし。でも今は特にそんなこともないから、自分の中で何かが変わったんだろうなと思います。
<長濱>自分は人が嫌いなのかなって思うことがあるのですが、なのに人に執着してしまうんです。SNS やネットを通じて「自分が人からどう見られるか?」を意識するのが当然の世界で生きてきちゃったからだと思うんですが。
<本谷>番組に入ってきた当初、ねるちゃんは戸惑ってる感じで、だけど殻を破りたがってる印象だった。それこそ「人からどう見られているか」を意識しながら生きてきたんだろうなって。いろいろ考えてるけれど、自分のことはあんまりわかっていない子っていう(笑)。どう生きたらいいか、今まさに人生の岐路に立っているんでしょうね。
<長濱>「セブンルール」は大好きな番組だったし、そこに入るのがすごく怖かったんです。私は番組のカラーにも合わないし、視聴者の方に拒絶されそうな気がして。でも本谷さんは「私の発言が嫌だったら言ってね」ってLINEを下さったり、なんて優しい方なんだろうって思いました。
<本谷>人の気持ちが分からずに、たくさん過ちを犯してきたので(笑)。愛情で言ったことが、相手にとっては本当に不愉快だったりするんですよね。でも私も緊張してましたよ。人気のアイドルで、私の発言にファンが「俺のねるになんてことを!」みたいなことになったらどうしよう、って。でもだんだんねるちゃんが「むしろいじって下さい」の人なんだとわかったし、そのほうがねるちゃんの面白いところがでるなと思ったよ。
<長濱>私たちの世代が使う「共感」って、もとの意味よりずっと安くなってる気がするんですよ。
<本谷>それはどういう意味?
<長濱>例えばSNSのフォロワー数がその人の評価材料になることがあるらしいんですが……。
<本谷>あるらしいね、まずフォロワーが何人いるか見るっていう。
<長濱>でも私たちは、正直あまり考えずにフォローや「いいね!」してることもあると思うんです。お付き合いで「いいね!」するし、相手が「 いいね!」してくれたらお返しに「いいね!」するし。上の世代が思うほど、相手に共感していない場合もありますね。
<本谷>そうなんだ。大人たちはそれで影響力を判断して右往左往してるんだね。
<長濱>世の中にいろんな情報がすごく溢れているから、ひとつずつを深堀りしたり、深く考えることができなくなってる気がするんです。たとえば「映画ファン」って言っても、この監督が好きと思って観る人もいるけど、ネットの「オススメ」だったり、これが流行ってるとか、これをおさえておけば感度がいいと思われるとか、そういう理由で選んでることもあると思うんです。自分も「本好き」「映画好き」っていえるかなって思い始めちゃって……。
<本谷>それってどういうこと?
<長濱>私は映画を観るのがすごく好きなんですが、かといって自分の生まれる前の巨匠の作品を知ってるわけでも、マーベル作品にめちゃくちゃ詳しいわけでもなく、ただ単に自分の興味のある映画を興味のある順に追ってきただけなんです。それって自分の中では「映画好き」なんですが、あるお仕事でご一緒した人から「ねるちゃんって映画好きなんだよね。じゃあクリストファー・ノーラン監督でどれが好き?」って聞かれた時に、一作品も見たことがなかったんです。じゃあ私って「映画好き」って言えないのかな、そうしたら「映画好き」とか「音楽好き」とか「本好き」ってなんなの? って思っちゃって……。自分をカテゴライズする時に、何を押さえておけば「映画好き」って言えるのかなって疑問に思って、自分に対してすごい苦しくなっちゃって。
<本谷>たぶん「映画が好き」と「映画好き」っていう言葉のニュアンスが微妙に違うんですよね。「映画好き」って言うと「映画全般をジャンルとして好き」って意味合いにとられるから、「ノーランの何が好き?」って聞かれるのはちょっと分かる。今度「映画好きなんだよね?」って聞かれたら、「あ、違います、映画が好きなんです」って答えたら、そういう間違いは起こらない気がするよ(笑)。
<長濱>え~、面白い。
<本谷>本当ちょっとしたニュアンスの違いなんだろうなって。難しいね、何が好きかとかは。語れるほどわかってることってほぼないし。
<長濱>私も一個もないです。
<本谷>でもねるちゃんって「本が好き」っていうところをひとつ打ち出してるじゃない……打ち出してるかどうかわかんないけど。
<長濱>何もないです。こういう仕事、それこそ「タレント」って言葉がそうですけど、何かを持っている人、何かに特化している人でいなきゃいけないと思うんですが……。
<本谷>そうなんだ。みんな何かに特化してるのかなあ(笑)。
<長濱>それとか何かを思い続け、好きであり続け、やり続けられるとか……回りもそういう人ばっかりだなって思って。私はそうじゃないから、自分のことを厚く塗りたくって固めているんです。メッキが剥がれて「ねるちゃん何もないよね」と言われるのが怖くて、先に自虐しちゃったり。卑下することでより深く傷つかないように、無意識に自分を守ってるんだなって思うんですよね。
<本谷>プロテクトしてるんだ、失望される前に。
<長濱>だから私は逆に推子みたいな世界ーー個性も何もない世界のほうが楽なのに、生きやすいのに、って。
<本谷>本当にいろんなことを考えている時期なんだろうね。この作品の感想で、「個性がないほうが幸せ」と言われたのは初めてです。面白いから、ねるちゃんは悩み相談の連載とかしたらいいような気がする。
<長濱>私が誰かの悩みを聞くんですか?
<本谷>そう。でも最終的にはねるちゃんが、その人に悩みをめちゃくちゃ相談して、毎回終わるっていう連載が読みたい(笑)。
<長濱>ええええ、いいかも(笑)。でも自分以外の人と話すのってすごい面白いです……って、私の話ばかりなんですけど。
<長濱>私、SNSとかで「今日も無理せず、出来る範囲で頑張りましょう」とか、そういう発信が多いんです。最初は意図的に言ってたんですね。自分がすごく辛い時に、大人から言われた「みんな辛いんだから」って言葉がすごく悲しくて覚えていて。そんなことは分かってるけど、めちゃめちゃ苦しいんです! って思ったから。そうしたらある時、女の子からコメントがポンと飛んできて。「『無理せず』と言ってくれるのは嬉しいけど、たまには『精一杯頑張ろう』とか『挑戦してみよう』とかって言ってほしいです」って。自分にはそういう発想がなかったから、すごい納得しちゃったんです。そっか、それも大事か、って。人との交流って大事だなって思いました。
<本谷>「無理せず頑張ろう」って言葉は、誰かがそれで楽になるって言う事を考えて?
<長濱>それもあるし、発信しながら自分に言い聞かせているところもあります。
<本谷>自分が楽になる言葉ってありますよね。私、最近芝居を作らなきゃいけなくって、「上手くやらなきゃ」とか思い始めたら、ちょっと憂鬱になって。それで目的を変えたんです、「ヨシ、何とかごまかそう!」って(笑)。そうしたらポンと抜けて、楽になった。何もかも全部ごまかして生きていこう、と改めて思いましたね。
<長濱>めちゃくちゃいいですね。自分にそう言うと全然違いますよね。確かに。
<本谷>「ごまかす」ってホントはよくないことだから、誰かが楽になるために言おうとかは思わないけど。でも私の場合は、そうやって「無理なく」とか「楽に」みたいな既存の言葉じゃなく、自分の言葉になるべく変換していくかな。「長濱さんはどういう活動していきたいですか?」って聞かれたら「なんとかごまかして生きていこうと思います!」って答えるのはどうだろう?(笑)
<長濱>本谷さんも絶望のような苦しくなることありますか? 「もうわかんないよ!」みたいなこと。
<本谷>あるよ。私は自分のことをポジティブだとは全然思わないですよ。気質として、ネガティブ人間だなと。できない、無理、やめたいとか、モチベーションがわかないことも、すごくあるし。そして出来る限りそういう気持ちに忠実にいようと思っていて、それで人に迷惑かけることもすごくあって。でもそれが、私の生き方なのかなあと思うんだよね。自分のネガティブな感情に向き合うのも、ひとつの責任のとり方だな、と。自分が「無理だ」と思った時に、どういう言葉を選ぶか、どう向き合うかで、その人の生き方が決まってくると思う。
<長濱>すごい当たり前のことを最近知ったんですけれども、人の気持ちって自分ではどうにもならないじゃないですか。
<本谷>そうね(笑)。
<長濱>それを知ったら、すごい傲慢なんですけれども、人生って嫌だな、生きるのが面倒くさいなって思っちゃって。何を本谷さんに聞きたいのかよくわからなくなってきちゃったけど。そういう時に、真っ正面に向き合った方がいいのか、適当にやり過ごしたらいいのか。生きてきて何か後悔したこととかもありますか?
<本谷>たくさんある気がするけど、何ひとつ覚えてないなあ。でも常に「後悔したらどうしよう」って思ってる気がする。そういうことばっかり考えてて、頭おかしいってよく言われるし(笑)。今、ねるちゃんの言った、「生きるのめんどくさ!」って言葉がとても印象的だったな。それが、ねるちゃんを形づくる一部なんだろうね。
<長濱>放っておいても、ずっと考えちゃうんです。何に対しても、何をやっても釈然としないし、でも根本ではずっと、何もかもどうでもいいって思っている自分がいる気もして。
<本谷>昔から? 五島列島にいた時から?
<長濱>10代半ばくらいからかな。一種の防衛だと思うんですけれども。 人にあまり深入りしない、人をあまり信用しないっていうのは、何ですかね。
<本谷>大変だったんだよ。
<長濱>私が本谷さんに「大変だったんだね」って言わせてしまっているなら、そういう自分も気持ち悪いんです(笑)。
<本谷>「だね」じゃなくて、本当に大変だったんだよ。島とか戻って裸で木とか登ったら、そういう面倒くささも消えるかもしれないね。
<長濱>人って変わると思いますか? 自分を変えることはできると思います?
<本谷>自分を変えることはできると思います。他人は知らないけど(笑)。
<長濱>本谷さんは変わったなと思いますか?
<本谷>変わったは変わった。年齢とともに。18歳で東京に出てきた時は「人に馬鹿にされたくない」とか「人からどう思われるか」って事しかなかったから、本当にしんどくて。自分の中に自意識の化け物みたいなのがいて、「一生こいつといたら死んじゃう」と思ったけど、今は本当に見る影もなく。自分のことは基本的にどうでもいいし、ネットで何か言われても「そういう人がいるんだな」くらいだし、ボロボロの格好で保育園とかにお迎えに行くのも平気。18歳の自分からしたら、ちょっと信じられない。
<長濱>それは意識的に? それとも自然治癒ですか?
<本谷>意識はぜんぜんしてない、ただただ本当にどうでもよくなっていったんですよ。心配なくらいです。
<長濱>今私には化け物が宿っているけど、なんとなく、いなくなっていくんですか。
<本谷>人それぞれだからね。でも昔の私は自分に興味が向きすぎていて、「こんな滑稽な、面白い生き物いない」って思ってたんです。それで小説に書いてたんだけど、でもある時、「なんかもういいや」って飽きたんだよね。それで外に目が向いたら、自分より面白いものがいくらでもあった。
<長濱>それは何歳ぐらいの時だったんですか?
<本谷>「私」という一人称で小説を書くのをやめたあたりで。自分ってもっと面白いかなーって、過大評価してたんですよね。
<長濱>なんかすごくわかります。私も自分を卑下するし最悪だって思うわりに、自分はもっとできるはずって期待しちゃう自分もいるので。自分をコンテンツとして楽しみ尽くすって、なんか新しい。どうしていったらいいんだろう。
<本谷>だからもしこれが人生相談なら、自分のことを考え尽くしてみたらいいと思う。若い子が自分のことをたくさん考えるのは食事とか排泄と同じくらい生理現象な気もするし。だってねるちゃんの年齢で私みたいに「どうでもいいんだよね」って言ってたら、「大丈夫?」って思うじゃない(笑)。20代で散々それを味わっておけばいいよ。考えて考えて考え抜いた先に、また次のステージに到達できたらいいよね。
<長濱>それは希望の言葉です。光が見えた気がします。
2⃣ 前半の特に気になった部分
長濱ねるが一番聞きたかった質問は「本谷さんは人が好きですか?」なんだろうと思います。本谷有希子も少し驚いて「ひとつじゃなくて、撮影の時からいくつも聞かれてるよ(笑)。」と答えていることからも分かります。この質問の凄いところは本谷有希子は母親にも近い20才も上の芥川賞等、日本の主だった文学賞を総なめにしている凄い作家だと言うことです。そんな本谷有希子に対して長濱ねるは普段の謙虚さは微塵も見えない程の鋭い質問をしています。本谷有希子は21才で「劇団、本谷有希子」を旗揚げし、主宰として作・演出を手がけ、今では世界9か国語で出版されるほどのグローバルな才能を持った新進気鋭の作家です。
なぜこんな質問をしたのかと考えると、常日頃から『セブンルール』で本谷有希子が言いたい放題しているからであり、尊敬している西加奈子と比較しているからだろうと思います。西加奈子は誰にでも分かり易いように人の道を説き、常に愛を持って小説を書いているからだと思います。若林正恭のエッセーを読みましたが、飲み仲間の人間失格のような若林正恭に方向性を示したのは西加奈子だし、明石家さんまが『漁港の肉子ちゃん』をアニメ映画化したいと西加奈子にお願いしたのもその溢れる人間愛からでした。お陰で元嫁の大竹しのぶも作品に声優として参加しています。長濱ねるにとって本谷有希子は未知の人なのでしょう。
「でも私も緊張してましたよ。人気のアイドルで、私の発言にファンが『俺のねるになんてことを!』みたいなことになったらどうしよう、って。」というのが本音でしょうし、代わりにとばっちりを受けたのが尾崎世界観で、弄られるターゲットになってしまいました(笑)。青木崇高は尾崎世界観のお陰で攻撃の矢が減ってホッとしていることでしょう。元々、長濱ねるはマスコット的な立ち位置なのでしょうが、1年以上経過しましたからそろそろ言いたいことを言うべき時なのかもしれません。あの番組は生放送ではなく編集できますからもう少し自分の意見を言えばいいと思うが、YOUと本谷有希子の迫力には若林正恭も負けたのかもしれません。
3⃣ 後半の特に気になった部分
長濱ねるの「本好き」「映画好き」の話はよく分かるし、本谷有希子の言う「映画が好き」の話もよく分かります。一般論で考えれば本好きは本が好きと同意語だと思うし、映画好きも映画が好きと同じ意味だと思います。ただ厳密に捉える人に言わせれば、「本好きなのにこれも知らないの?」とか、「映画好きなのにこれも知らないの?」という話になるのだと思います。本谷有希子レベルになればそういう解釈になりますが、我々庶民レベルではどうでもいい話で、あまり気にする必要はありません。ところが人一倍「気にしぃ」の長濱ねるにとってはそこが問題なのでしょう。特にタレントとして話が公共電波に乗ればその界隈の人々からは「長濱ねるってそのレベルなの?」などと思われるのでしょう。
私の個人的感想を述べれば、長濱ねるは胸を張って「本好き」を名乗っていいレベルです。何しろ保育所時代から図書館に通っていて、小学校では司書の方と親しくなって入り浸っていた訳ですからね。中学校では長崎県の読書感想文で最優秀賞を受賞したと言うことは長崎県下で1位だったと言うことです。高校時代も好きな作家の本を読み漁り、大学では司書の資格を取る為に恐らく文学部に通っているのでしょうから、これで「本好き」でなければ誰が「本好き」を名乗れるのか?という話です。しかも忙しい芸能人で、23才という年齢まで考えたら猶更右に出る者は殆どいないと思います。そういう意味でも「文学少女」や「本好き」を名乗っても何の違和感もないし、寧ろ名乗るべきでしょう。
私も歴史が好きなのですが、「歴史好き」とは思っていません。私の場合は何遍TVの歴史番組を見ても殆ど忘れてしまうからです。特に今月は東京旅行に行っていましたから、レコーダーに溜まっていて見るのに四苦八苦しています。長濱ねるの場合はそんなことはないでしょうから、本に関しては今まで通り「本好き」を名乗るべきです。そのお陰で幻冬舎文庫のフェアキャラクター等の仕事も舞い込んできた訳ですから、寧ろ一番の武器だと思います。セブンルールで本谷有希子も読んだ本を忘れるから読んだ本のリストを書けるノートを買ったと言っていました。忘却は誰しも避けられない人間の宿命だし、忘却によって人間は救われることもあるからあまり気にしないように生きたいものです。
「映画好き」に関しては「本好き」ほど歴史がないでしょうから、せめて好きなジャンルについてだけ公言した方が良さそうです。その方がぼろも出ないし、これから徐々に興味の範囲を広げていっていづれ「映画好き」を名乗れるようになればいいと思います。いづれにしても芸能人ですから自分の個性をアピールしないと誰も使ってくれませんから、その点は我々庶民とは大きく違います。長濱ねるが10代半ばから人にあまり深入りしないし、人をあまり信用しなくなったと言っていますから、高校に進学した頃からでしょう。それで直後に東京に出てアイドルになった訳ですから、ある意味ベストタイミングだったのかもしれません。極端な「気にしぃ」である長濱ねるならではの悩みなのかもしれません。
4⃣ 二人の略歴
【本谷有希子】
1979年、石川県生まれ。2000年「劇団、本谷有希子」を旗揚げし、主宰として作・演出を手がける。主な戯曲に『遭難、』(第10回鶴屋南北戯曲賞)、『乱暴と待機』、『幸せ最高ありがとうマジで!』(第53回岸田國士戯曲賞)などがある。主な小説に『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』、『生きてるだけで、愛。』、『ぬるい毒』(第33回野間文芸新人賞)、『嵐のピクニック』(第7回大江健三郎賞)、『自分を好きになる方法』(第27回三島由紀夫賞)、『異類婚姻譚』(第154回芥川龍之介賞)、『静かに、ねぇ、静かに』など。近年、著作が海外でもさかんに翻訳され、『異類婚姻譚』『嵐のピクニック』を始め、世界9言語で出版されている。英語版はThe New Yorker、The New York Timesなどで大きな話題となった。
【長濱ねる】
1998年9月4日長崎県長崎市生まれ。3歳から7歳まで長崎県五島列島で育つ。2015年欅坂46のメンバーとしてデビュー。2019年7月にグループを卒業。現在は、書籍情報誌でエッセイ連載や、TV番組「セブンルール」「legato~旅する音楽スタジオ~」のMC、ラジオJ-WAVEにてナビゲーターを務めるなど多方面に活躍中。趣味は読書。
5⃣ 感想
本谷有希子の経歴を見ると凄まじく、何と21才という若さで劇団を立ち上げ、鶴屋南北戯曲賞・岸田國士戯曲賞・野間文芸新人賞・大江健三郎賞・三島由紀夫賞・芥川龍之介賞等の数々の文学賞を総なめにしているまだ41才の天才レベルの作家です。一方、長濱ねるが尊敬する西加奈子は織田作之助賞・さくやこの花賞・直木賞・本屋大賞・河合隼雄物語賞等を受賞した本谷有希子とは全く違うタイプのこれまた凄い作家ですから、自分の人生の幅を広げる意味では、どちらも非常に参考になる作家だと思います。純文学の芥川賞作家本谷有希子と、庶民的な直木賞作家西加奈子という両先輩に囲まれて幸せな長濱ねるだと思います。尚、本谷有希子の旦那は詩人・作詞家、西加奈子は編集者です。
本谷有希子の「自分の中に自意識の化け物みたいなのがいて、『一生こいつといたら死んじゃう』と思ったけど、今は本当に見る影もなく」、という言葉に対して、「今私には化け物が宿っているけど、なんとなく、いなくなっていくんですか」と質問した長濱ねるは流石です。「若い子が自分のことをたくさん考えるのは食事とか排泄と同じくらい生理現象な気もするし。だってねるちゃんの年齢で私みたいに『どうでもいいんだよね』って言ってたら、『大丈夫?』って思うじゃない(笑)。20代で散々それを味わっておけばいいよ。考えて考えて考え抜いた先に、また次のステージに到達できたらいいよね」と言われて、「それは希望の言葉です。光が見えた気がします」と返していますから、話は嚙み合っているようです。
1⃣ 欅坂/日向坂/櫻坂/乃木坂/カラバト/STU/AKB-G等スケジュール
10/23(土) 原田葵がジョブチューン2時間SPに出演(18時51分~)
10/23(土) 与田祐希がほんとにあった怖い話2021特別編に出演(21時~)
10/23(土) 齊藤京子があざとくて何が悪いの?に出演(21時55分~)
10/23(土) 長濱ねるがBSテレ東/ファッション通信に出演(23時~)
10/23(土) 日向坂46がシブヤノオトに出演(23時10分~)
10/24(日) 土生瑞穂がなりゆき街道旅に出演(12時~)
10/24(日) 富田鈴花・松田好花・渡邉美穂が東京03とスタアに出演(13時45分~)
10/24(日) 渡邉美穂が上田晋也の日本メダル話に出演(17時~)
10/24(日) 森田ひかるがダーウィンが来た!に出演(19時30分~)
10/24(日) スペースシャワーTVプラスで櫻坂46撮り下ろし特番放送(21時~)
10/24(日) 原田葵が日曜日の初耳学に出演(22時~)
10/25(月) 日向坂46がCDTVライブ!ライブ!に出演(21時~)
10/26(火) 森田ひかるがNHK-Eテレ/沼にハマってきいてみたに出演(18時55分~)
10/26(火) 長濱ねるがレギュラー出演中のセブンルール放送(23時~)
10/26(火) 西野七瀬がレギュラー出演中のグータンヌーボ2に出演(24時25分~)
10/28(木) 金村美玖・渡邉美穂がTHE突破ファイル2時間SPに出演(19時~)
10/30(土) 長濱ねるの音楽番組M ON!TV~旅する音楽スタジオ~放送(1時~)
10/30(土) 長濱ねるとハリー杉山のPOP OF THE WORLDに出演(6時~)
10/31(日) 中田花奈が中井正弘MCのただただ話すに出演(16時~)
11/01(月) 森田ひかるがEテレ/趣味どきっ!アイドルと旅する仏像の世界に出演(21時30分~)
11/02(火) 長濱ねるがレギュラー出演中のセブンルール放送(23時~)
11/02(火) 西野七瀬がレギュラー出演中のグータンヌーボ2に出演(24時25分~)
11/03(水) 長濱ねるナレーションのNHK総合/少しずつ世界を変えていく(11時5分~)
11/04(木) 織田奈那の1st写真集in沖縄/無頼派の純情発売
11/06(土) 『ねる、取材行ってきます〜TOKYO アイドルタイムズ〜』3回目放送(1時25分~)
11/06(土) 井口眞緒のスナックまおin西荻窪開催&オンライン配信同時開催(12時~)
11/06(土) 長濱ねるがNHK総合/有田Pおもてなすに出演(21時50分~)
11/08(月) 長濱ねるがNHK-Eテレ/きょうの健康に出演(20時30分~)
11/09(火) 寺田蘭世の1st写真集/なぜ、忘れられないんだろう?発売予定
11/09(火) 長濱ねるがNHK-Eテレ/沼にハマってきいてみたに出演(18時55分~)
11/09(火) 長濱ねるがレギュラー出演中のセブンルール放送(23時~)
11/09(火) 西野七瀬がレギュラー出演中のグータンヌーボ2に出演(24時25分~)
11/10(水) 特典映像付きのドラゴン桜Blu-lay&DVD発売予定
11/12(木) 影山優佳がビッグコミックスペリオールの表紙に登場
11/13(土) 長濱ねる出演のNHKBSP離島で発見!ラストファミリー物語3回目放送(21時~)
11/16(火) 長濱ねるがレギュラー出演中のセブンルール放送(23時~)
11/16(火) 西野七瀬がレギュラー出演中のグータンヌーボ2に出演(24時25分~)
11/21(日) NHK子ども科学電話相談inヒカリエに長濱ねるが出演(9時45分~)
11/22(月) 松田好花がEテレ/趣味どきっ!アイドルと旅する仏像の世界に出演(21時30分~)
11/23(火) NHK未来スイッチ公開収録inヒカリエに長濱ねるがMCとして出演(12時15分~)
11/23(火) 長濱ねるがレギュラー出演中のセブンルール放送(23時~)
11/23(火) 西野七瀬がレギュラー出演中のグータンヌーボ2に出演(24時25分~)
12/18(土) 平手友梨奈主演のNHKドラマ風の向こうへ駆け抜けろ前編放送(21時~)
12/24(金) ひなくり2021in幕張メッセ国際展示場9-11ホール初日(18時30分~)
12/25(土) ひなくり2021in幕張メッセ国際展示場9-11ホール最終日(17時30分~)
12/25(土) 平手友梨奈主演のNHKドラマ風の向こうへ駆け抜けろ後編放送(21時~)
02/26(土) 菅井友香出演のミュージカル/カーテンズ東京公演(~3月13日)
03/18(金) 菅井友香出演のミュージカル/カーテンズ大阪公演(~3月22日)
03/26(土) 菅井友香出演のミュージカル/カーテンズ愛知公演(~3月27日)
※今朝も6時に起きて『POP OF THE WORLD』を聴いていたら長濱ねるのお兄さんも結婚していると言っていました。多分去年結婚したのだと思いますが、4つ上だと言っていましたから今は27才なのでしょう。お姉さんの子供の話はよくしていますが、お兄さんの方は聞いたことがないから子供はまだなのでしょう。来年になったらお兄さんの子供の話も聞けるかもしれません。幸せ一杯の長濱ねるですが、今夜はBSテレ東のファッション通信に出演するようです。
※8月30日から6日間行われたRakuten Fashion Week TOKYO2022のSDGsレポーターをしていましたから、その時の模様がダイジェストで放送されるようです。ファッションに無頓着な私ですが、長濱ねるがセブンルールで2週毎に着ている服を全部覚えていて、先日初めて過去と同じ服だったことに驚いた自分に一番驚きました。長濱ねるお勧めの映画を見たり、本を買って読んだりと色々大変ですが、これで自分ももう少しまともな人間になれそうです。