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日向坂ストーリーⅥ 全国ツアーと日本武道館

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2017年10月から放送されたけやき坂46の初主演ドラマRe:Mind。「ひらがなけやきは芝居ができるチームになろう」というスタッフの励ましを素直に受け止め、真っすぐに努力した結果、けやき坂46メンバーたちは演技の面白さを知ることができた。さらに、芝居で大切な相手をよく見るという意識は、その後のステージでのパフォーマンスにも生かされることになる。このドラマの撮影期間は約2ヵ月に及んだ。そしてその間も、ライブ、番組収録などの活動は行なわれていたのだった。

 

 

ひらがな第一章:https://ameblo.jp/kablogkun/entry-12449697758.html

 

ひらがな第二章:https://ameblo.jp/kablogkun/entry-12451548271.html

 

ひらがな第三章:https://ameblo.jp/kablogkun/entry-12452968835.html

 

ひらがな第四章:https://ameblo.jp/kablogkun/entry-12454715406.html

 

ひらがな第五章:https://ameblo.jp/kablogkun/entry-12456332169.html

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1⃣ ひらがなけやき第6章

 

 

① 誰も座っていないねるちゃんの椅子

 

2017年11月6日、福岡サンパレスホールでけやき坂46の全国ツアー福岡公演が行なわれた。オープニングパフォーマンスではメンバーによるカラーガードを披露した。フラッグやライフルを使ってマーチングを盛り上げるカラーガードという競技は、東村芽依が中・高のときに取り組んでいたものでもあった。練習でほかのメンバーに教えることもあった東村は、この日のステージでもセンターに立って、最後は大きなライフルトスをキャッチしてパフォーマンスを締めた。佐々木久美は、この公演からあるゲームをするようになった。会場のファンの顔をひとつひとつ見回し、真顔で見ている客を見つけたらその人が笑うまで徹底的にハッピーオーラを振りまく。そして相手を笑顔にさせたら自分の勝ち――。ライブをより盛り上げるために彼女なりに考えてやっていることだったが、そこにはドラマで培った相手をよく見るという意識が確実に生かされていた。

 

そしてドラマの主題歌でもあったそれでも歩いてるも、ここで初めて全メンバーによって披露された。この楽曲では、センターを務める齊藤京子に続いて11人のメンバーがそれぞれソロを取っていく。けやき坂46の楽曲において全員にソロパートがある曲はこれが初めてであり、その緊張感が彼女たちの歌唱力を鍛えることになった。この楽曲のパフォーマンスでは、小道具として12脚の椅子が使われる。中央に置かれた誰も座っていない一脚は、メンバーがねるちゃんの椅子と呼んでいるもので、長濱ねるを含む12人でつくってきたけやき坂46の歴史を表すとともに、フォーメーション移動の多いこの楽曲の振り付けの基準点にもなっている。そして曲のラストでは、一列に並べた12脚の椅子をメンバーが次々と飛び越えていく。

 

生まれてから死ぬ日まで/そうさ それでも歩くこと/だから それでも歩いてる/という歌詞のとおり、今までけやき坂46が歩いてきた過去を踏まえ、次の道へ進んでいこうとする意志を示していた。すでにこのとき、全国ツアーのファイナル公演は千葉・幕張メッセで行われるということが発表されていた。そのキャパシティは2日間で計1万4000人。これまで回ってきた3000人以下のライブハウスとは桁違いの規模だったが、チケットは先行販売の時点で多くの落選者が出るほどの売れ行きだった。これはメンバーはおろかスタッフも驚くほどの結果だった。その最大の理由と考えられるのがライブビューイングの存在だった。春から始まったこの全国ツアーでは、全国4ヵ所のライブハウスでライブビューイングと呼ばれる同時中継が行なわれていた。

 

知名度の低かったけやき坂46にとってはチャレンジングな企画だったが、このライブビューイングを盛り上げるために毎回2名の欅坂46メンバーがライブに同行し、舞台裏レポートをするなどのバックアップも行なわれた。この中継を通じて地方にも徐々にけやき坂46のファンが増えたと同時に、2期生加入、長濱ねるの兼任解除という激動の道を歩んできたこの数ヵ月のグループの物語が多くの観客に共有されることになった。さらに、ファンの間では2期生たちも次の幕張のステージに立つのではないかという期待も膨らんでいた。8月に加入した2期生9人は、ここまでファンの前でパフォーマンスを行なう機会がなかったのだ。こうしてけやき坂46は、グループ史上最大規模のワンマンライブへと向かっていった。

 

 

② 50m走で生まれた加藤と渡邉の絆

 

お披露目の前から2期生のレッスンを指導していたダンサー振付家のTAKAHIROは、初めて彼女たちと顔合わせをしたときのことをよく覚えている。「よろしくお願いします!」。その声の大きさと勢いに、肌がビリビリと震えるような感覚を抱いた。欅坂46やけやき坂46の1期生とはまったく雰囲気の違う、新世代の子たちが入ってきたという印象を受けた。その後、2期生たちは欅坂46の冠番組欅って、書けない?に6週にわたって出演。さらに雑誌の誌面も多く飾った。けやき坂46の1期生がグループを大きくしてきたことによって、次の世代への注目度が確実に上がっていたのだ。その2期生を含む20人で歌う初めての全体曲NO WAR in the futureの振り入れは、福岡公演の後に行なわれた。加入した頃の1期生にはとうてい踊れなかったような難しい振り付けにも臆さず、積極的についてくる後輩たちを見て、1期生たちは「2期の子たちすごいね」と口々に言い合った。

 

だが、周りからどう見えていても当の2期生たちは不安で押しつぶされそうだった。最年少でバレエ経験者の濱岸ひよりは、この曲の中で同じくバレエ経験者の佐々木久美とシンメトリーになって、バレエの技を披露することになった。しかし初めての合同レッスンのプレッシャーで息もできないほど緊張していた濱岸は、重要なポジションに抜擢されて「私なんかでごめんなさい、ごめんなさい」と内心は萎縮しっぱなしだった。欅坂46の曲に出会って人生が変わったというほどグループに思い入れの強かった丹生明里は、1期生とハグするシーンで極端に遠慮してしまい、この日はひと言も先輩に話しかけられなかった。

そんな彼女たちを励ましたのが同じ2期生の渡邉美穂だった。「みんな大丈夫だよ!1期さんは優しいから!」

 

Re:Mindの撮影にひとりだけ参加していた渡邉は、いち早く1期生たちと関係を築いていた。特に加藤史帆とは先輩後輩を超えて友達のように接することのできる仲だった。渡邉が加藤と話すようになったきっかけは、ドラマの現場で加藤からふられたたわいもない一言だった。「ねぇ、埼玉出身でしょ?私も埼玉好きだよ」。その後、欅って、書けない?の収録で50m走をすることになった際、予選で加藤から「一緒に走ろう?」と誘ってもらった。そして渡邉に僅差で勝った加藤は、息を切らせながら「やっぱり速いねぇ」と笑った。欅坂46/けやき坂46のメンバー38人が参加したなかで、このときのふたりのタイムは加藤が1位、渡邉が2位というものだった。そしてこのレースを境にして、ふたりの距離は一気に縮まった。

 

 

③ ひらがなに入ってくれてありがとう

 

グループ一の運動神経を誇る加藤史帆は、小学5年生から中学3年生までソフトテニスに打ち込んでいた。クラスの中ではさして目立つタイプではなかったが、中学の部活では都大会常連という実力者だった。その当時は、うまい先輩の後ろにぴったりついて黙々と技を学んだり、毎日家の前でひたすら壁打ちをしていた。後にけやき坂46に入ってからも、加藤がこうした生まじめさを見せる場面は多かった。レッスンが始まった当初、ダンスに苦戦していた加藤に、マネジャーがなんの気なしに「レッスンはちゃんとしなよ」と言うと、加藤はこう応えた。「はい、頑張ります。私、ちゃんと踊れるようになりたいし、ひらがなけやきをもっといいチームにしたいんです。明日は1時間早くスタジオに入って、レッスンの前に自主練してもいいですか?」

 

一方で、何事に対しても弱気でネガティブなところがあるのも加藤の一面だった。初めて雑誌の撮影をしたとき、写真を撮り終わった瞬間に加藤はこらえていた涙をボロボロとこぼした。撮影中、カメラマンの後ろで話しているスタッフを見て「あのコかわいくないね」と言われているのだと勝手に思い込んでいたのだ。また、全国ツアーの大阪公演で制服と太陽のセンターに指名されたときも、仲のいい佐々木久美に「なんで私なんだろう、センターなんてできない」と弱音を吐き、延々泣き続けた。加藤にとって、アイドルとして活動するということは、自分の弱い心と戦って少しでも前に進んでいくという日々そのものだった。

 

やがてグループに2期生が加入し、ドラマの撮影現場に渡邉美穂がひとりでやって来たとき、加藤は彼女の気持ちがよくわかる気がした。自分も中学の頃、同学年の中でひとりだけ先輩と大会に出て、寂しさとプレッシャーを感じながら必死にプレーしていた記憶があったからだ。今まさにそんな思いを抱いている渡邉を少しでもリラックスさせてあげたくて、加藤はたわいもない話をふったのだった。実は渡邉にも加藤と似たところがあった。小学生のときから10年間バスケに打ち込み、高校ではキャプテンとして県大会常連の部を率いていた彼女にも、確かに体育会系のストイックさがあった。

 

しかし根は悩みがちで、人の和を優先する性格だというところが加藤と共鳴したのかもしれない。かつて彼女たち2期生の募集が発表されたとき、スタッフから「この募集はひらがなにとっていいことしかない」と説明されても、気持ちがついていかなかった加藤。しかし、もともと乃木坂46の大ファンでアイドル好きだった彼女は、初めて2期生たちと挨拶したときにはもう気持ちが切り替わっていた。「こんなかわいいコたちがひらがなに入ってきてくれたんだ。私たちずっと漢字さんのアンダーって言われてたのに、そんなグループに入ってきてくれて本当にありがとう」。こうしていよいよけやき坂46は20人体制となり、幕張のステージを迎えるはずだった。しかしそこに至る道には、まだ大きな試練が待ち受けていたのだった。

 

2017年春から始まったけやき坂46初の全国ツアーは、残すところ千葉・幕張メッセでの2days公演のみとなった。ツアーファイナルとなるこの千葉公演は、12月12、13日の2日間で計1万4000人を動員するという、これまでとは桁違いの規模のライブだった。しかし、これまで各地でライブビューイングを行なっていたことも功を奏し、けやき坂46のファンはツアー開始当初よりも大幅に増え、チケットは即完状態となっていた。また、この千葉公演で初ステージを踏むことになる2期生たちも、1期生たちとの合同曲NO WAR in the futureの振り入れを行なった。こうしてけやき坂46は、過去最大規模のツアーファイナルへと向かっていった。

 

 

④ 本番2日前に起こったアクシデント

 

千葉公演のセットリストに含まれていた楽曲は、2日間で計20曲。ここで初披露となる新曲NO WAR in the futureをはじめとするけやき坂46の全オリジナル曲に加え、これまでに歌ってきた欅坂46の曲や洋楽メドレーも並んでいた。さらにタップダンスやドラムマーチなど、全国ツアーの各会場で披露してきたパフォーマンスもすべて上演されることになっていた。まさに、1期生たちが約9ヵ月にわたって行なってきた全国ツアーの集大成といえる内容だった。そしてこの千葉公演で新たに披露される予定だったのがローラースケートのパフォーマンスだった。だが、子供の頃にやったことがあるというメンバーが多かったにもかかわらず、それは意外にもどのパフォーマンスより苦戦を強いるものだった。

 

練習ではヘルメットに加え手首・肘・膝のプロテクターを完全装備したが、何度も転ぶうちに恐怖心にとらわれるメンバーも出てきた。特に苦手意識があった佐々木美玲や高本彩花は、恐る恐る滑ってはすぐに手すりにつかまってばかりいた。また、ローラースケートを披露することが発表されたときから「できる気がしないんだけどどうしよう、ねぇどうしよう」と不安を口にしていた齊藤京子は、滑る前の足踏みの練習にさえ苦労していた。そんな状況のなか、より本番に近い環境で練習するために早朝から都内の大型ローラースケートリンクを借り切ってリハーサルを行なうことになった。ここでも、慣れない広いリンクとよく滑る床の上でメンバーたちは頻繁に転んだ。やがて講師が彼女たちを集めて口頭で説明を行なっているとき、異変が起きた。

 

「ちょっと気持ち悪くて......」。柿崎芽実がその場にしゃがみ込んだまま動けなくなってしまった。その顔は、驚くほど真っ青だった。すぐにスタッフが彼女を病院に連れていった。夕方になって再びリハーサルスタジオで楽曲の練習を開始したとき、スタッフにつき添われて柿崎が戻ってきた。その左腕は三角巾でつられていた。その柿崎の姿を見た瞬間、齊藤は「まさか」と鳥肌が立ったという。朝の時点で柿崎がそれほどの大けがをしているとは誰も予想していなかったのだ。そしてスタッフの口から経過報告が行なわれた。「見てのとおり、柿崎は左腕を骨折しました。今度の幕張のライブにも出られません」。そのショッキングな言葉に、ほとんどのメンバーは泣きだしてしまった。それは幕張のライブのわずか2日前のことだった。

 

 

⑤ 上を向いて涙を流さない

 

長野県で生まれ育った柿崎芽実は、子供の頃からなぜか人より注目される存在だった。幼稚園や小学校の学芸会では、特に立候補していないのに推薦を受けてお姫さま役をやった。活発で友達が多く優等生だったこともあり、中学では所属していた美術部の部長や生徒会書記も務めていた。けやき坂46のオーディションの合格発表の際も、スタッフから壇上の中央に立つように指示されたし、グループの最初のオリジナル曲ひらがなけやきでも長濱ねるとWセンターを務めた。また、加入当時14歳でグループ最年少だった柿崎は、メンバーからひっつき虫と言われるほどの甘えん坊だった。しかし、時に激しい一面をうかがわせることがあった。

 

グループの3曲目のオリジナル曲僕たちは付き合っているで、センターの長濱ねるの後ろの1.5列目という微妙なポジションを与えられた際は、悔しくてたまらなかった。センターから外されたことがいやだったのではなく、自分の実力不足をわかった上で「下げるんだったらこんな中途半端なところじゃなく、もっと後ろにすればいいのに」と思ったからだった。また、けやき坂46のライブで柿崎がセンターを務めていた二人セゾンで、ソロダンスを井口眞緒が担当することになった際は、「センターの芽実がやればいいのになんで私なの」といつまでもぐずぐず泣いている井口に本気で腹を立てた。「泣いても何も変わらないんだから、決まったことはやるしかないでしょ」

 

柿崎自身もセンターを務めるなかで何度も泣くことがあったが、「できません」と言って逃げたことは一度もなかった。その負けん気の強さと一度決まったことをやり抜こうとする性格は、気高さを感じさせるほどだった。そんな柿崎が幕張の大舞台を目前にして大けがを負ってしまった。実は転んで手をついた瞬間に「やったな」と自分でもわかったが、病院でレントゲンを撮ってあらためて骨折という診断結果を聞かされたとき、柿崎ははじめて大泣きした。それは医者が驚くほどの取り乱しようだった。けやき坂46のメンバーとして頑張ってきた1年半の成果を見せるライブに、自分は参加できない。その事実をこの時点ではっきりと悟ったからだった。

 

しかしその数時間後、リハーサルスタジオに戻ってきた柿崎は、ほかのメンバーが泣きじゃくるなかでじっと上を向いて涙がこぼれるのをこらえていた。その胸のうちにはこんな思いがあった。「ここで私が泣いちゃ絶対にダメなんだ。今みんなの気持ちが乱れたら、幕張を成功させられない」。柿崎のライブ不参加に伴い、本番直前のこのタイミングですべての楽曲のフォーメーションを変更することになった。それは、「芽実の分までほかのメンバーでカバーして最高のライブを届けよう」というチームの選択だった。

そのリハーサルの間中、柿崎はスタジオから一歩も離れずにじっとリハの様子を見ていた。一番悔しいはずなのに涙をこらえている柿崎の心中を思うと、メンバーですら誰も声をかけられない。しかしその気高い姿勢は、その場にいた者の心を強く刺激した。

 

いつも弱気だったはずの加藤史帆は、このときスタッフから「泣いたってしょうがないだろう」と言われて、はっきりと言い返した。「私は悲しくて泣いてるんじゃありません。悔しくて泣いてるんです」。柿崎と幕張のステージに立てないという悔しさが、メンバーたちの闘志に火をつけていた。そして、激しい気迫を放つこの先輩たちの姿をスタジオの隅で見ていたのが、2期生たちだった。スタッフも熱くなって声を張り上げるような異様な空気に当てられ、何人もが感情を高ぶらせて涙を流した。このとき見たリハーサルの光景こそ、彼女たちのその後の姿勢に決定的な影響を与えることになる。そんな嵐のような2日間を経て、いよいよライブの開催日がやって来た。

 

 

 

 

※全国ツアーファイナルとなる幕張メッセでのライブで、1期生と2期生の初の合同曲NO WAR in the futureを披露するメンバーたち

 

 

⑥ 私たちはここでとどまってはいられない

 

ライブはけやき坂46にとっての初めてのオリジナル曲ひらがなけやきで幕を開けた。当初センターに立っていた長濱ねるも柿崎芽実もいない10人だけのパフォーマンスだった。柿崎はこの日もステージ横のモニターに張りついてじっとメンバーたちが歌う姿を見ていた。ライブが始まった直後は、自分がそこに出られない悔しさと、自分のせいでローラースケートの披露も中止になってしまったことに対する申し訳なさで何度も涙があふれてきた。だが、このときステージに立っていたのは10人だけではなかった。ライブ前の円陣に柿崎も参加した際、誰からともなく「ねるちゃん」という声が上がると、佐々木久美が声を張って指示した。「ねるちゃんの分も空けて! 12人で、全力でやろう!」。1期生たちにとって今までの集大成となるライブだからこそ、長濱ねるも柿崎も含めた12人分のハッピーオーラを届けるんだという意識が、彼女たちの胸にあった。

 

そして広い幕張のステージで、たった10人であることを感じさせないくらい大きく踊る仲間たちの姿を見ているうちに、袖にいた柿崎の気持ちも変わっていった。「ライブって、見ているだけでこんなに元気が出るんだ。私も頑張っていこうって勇気をもらえるんだ。私はほんとにひらがなけやきのみんなが大好きなんだな」。この日、メンバーたちが衣装替えやユニット曲の交代のためにステージ横を通るたびに、柿崎は笑顔で「頑張って!」と声をかけ続けた。また、これからのグループの未来をつくっていく2期生たちも、ここで最初の一歩を踏み出した。ライブ中盤、2期生がひとりずつ登場し自己PRをした後、1期生も合流してNO WAR in the futureを初披露した。四つ打ちのビートに、拳を振り上げてジャンプする振りを多用したパワーのある楽曲だった。間奏では、メンバー全員でつくる大きなひという人文字が、ステージ真上のカメラでとらえられた。大人数になったことで初めてできたダイナミックなフォーメーションだった。2番のAメロでは、1期生と2期生がふたりひと組になって次々と前に出てポーズを決めるというパートも用意されていた。

 

この振り付けは1期生と2期生の融合を促すとともに、実はメンバーにカメラを意識させるという隠れたテーマも織り込まれていた。彼女たちの先輩の欅坂46のライブでは、メンバーの顔も判別がつかない逆光の中でパフォーマンスが行なわれるという演出が多用されている。その幻想的な光景は観客に陶酔をもたらすとともに、ほかのアイドルのステージとは一線を画すグループのカラーにもなっていた。けやき坂46のライブにおいても、欅坂46の楽曲をパフォーマンスする際は基本的にこの演出プランが踏襲されていた。しかし、欅坂46とは違うけやき坂46らしさを表現するために新たに加えられたのが、モニター越しのアピールだった。それぞれのメンバーがカメラに抜かれるタイミングを意識し、観客にアピールしていくというこのスタイルは、アイドルのライブにおいてはごくオーソドックスな方法論であり、大先輩の乃木坂46も最も得意としていることだった。

 

後にこのモニター演出はさらに進化していくが、こうしてアイドルらしく見せる楽曲とクールに見せる楽曲を使い分けていくという点で、乃木坂46と欅坂46のハイブリッドともいえるスタイルをけやき坂46はすでに試みていた。ライブのラストでは、柿崎芽実を含む1期生のみでW-KEYAKIZAKAの詩を歌唱した。左腕をけやき坂46のフラッグで包んだ柿崎がマイクを取って話すと、満席の会場から割れんばかりの歓声が起きた。「今、このステージに11人全員で出ていることが本当に幸せです」。柿崎をはじめとするけやき坂46の1期生たちは、グループに加入したころ、「欅坂46にアンダーグループはいらない」と一部のファンから言われたことを昨日のことのように覚えていた。それが今やこの広い幕張メッセをけやき坂46のタオルが埋め尽くす光景を見て、信じられない心持ちがするとともに、言葉にできないほどの幸せを感じていたのだった。そして2日目のライブの最後のMCで、佐々木久美はこう語った。

 

「私たちはねるちゃんひとりから始まった12人で頑張ってきて、次に11人になってしまって、また20人に増えたんですけど......。でもずっとねるちゃんの意志は継いでるし、こうやって私たちのことを好きって応援してくださる方が増えてるし、だから私たちはここでとどまっていられないなって思うんです。まだまだ未熟な私たちですけど、9人の後輩も増えて、もっともっと頼もしく、カッコいい、ハッピーオーラで包まれたグループを今の20人で育てていきたいなって思っています」。一言一言に思いを乗せるように彼女が話す間、満席の会場は一瞬も聞き漏らすまいと静まり返っていた。モニターには、この1年半のことを思い出して涙を流すメンバーたちの顔が映し出されていた。こうして、柿崎芽実の骨折という不慮の事態を乗り越えて行われたけやき坂46最大のライブは、無事に幕を降ろした。しかし、その直後に彼女たちはより大きな試練に直面することになる。

 

2017年春に始まったけやき坂46初の全国ツアーは、同年12月の千葉・幕張メッセ2days公演をもってファイナルを迎えることになった。しかしその本番2日前に柿崎芽実が腕を骨折し、ライブに参加できなくなってしまう。だが、「芽実の分までほかのメンバーでカバーして最高のライブを届けよう」という思いのもと、けやき坂46チームはすべての楽曲のフォーメーションを修正して幕張メッセのステージに立った。また、グループに加入して4ヵ月が経過していた2期生9人もこの地で初ステージを踏んだ。そして2日間で計1万4000人を動員するという過去最大規模のステージを見事成功させたのだった。

 

 

⑦ 本番直前に飛び交った「勝ちに行こう!」

 

年が明けた2018年1月。欅坂46/けやき坂46の日本武道館3days公演が開催されることが発表された。内訳は、1月30日にけやき坂46が、同31日と2月1日に欅坂46がそれぞれワンマン公演を行なうというものだった。音楽の聖地ともいわれる武道館での単独公演は、両グループにとって初めてのものだった。だが、やがて事態は急変する。1月中旬、スタッフから「重要な話がある」と言われて集まったけやき坂46のメンバーたちは、思わぬことを告げられた。「ひらがなけやき、あなたたちに武道館を3日間任せたいと思っています。やってもらえますか?」。突然の問いかけに、佐々木美玲は頭が真っ白になってしまった。答えを出す以前に、何を言われているのかさえうまく理解できなかった。ほかのメンバーも似たような状態で、「できますか?」というスタッフの再三の問いかけにも応えられず、うつむくばかりだった。

 

実はこの前に、欅坂46のセンターを務める平手友梨奈が全治1ヵ月のけがをしていることが判明し、武道館への参加を見送らなければならない事態となっていた。それを受け、スタッフと欅坂46のメンバーが話し合った結果、武道館公演までの残り時間のなかで平手のポジションを埋めて観客の求めるレベルのパフォーマンスをすることは難しいと判断された。そこで、すでに単独で全国ツアーを成功させてひと回り大きくなったけやき坂46に、3日間すべてを任せることになったのだった。この決断は、運営サイドとしても、けやき坂46のメンバーたちを信じるしかない賭けであった。だが、けやき坂46のメンバーの胸にはさまざまな思いがあった。齊藤京子は「単独で3日間なんて、体力が持つのかな。私、どうなっちゃうんだろう」と、その規模感に不安を感じていた。

 

佐々木久美は、「私たちだけで3日間なんて客席が埋まるはずないし、漢字さん(欅坂46)のライブを見たかったっていうファンの人がどう思うのか想像すると......怖いな」と弱気になった。高本彩花は、「きっと最後には漢字さんもライブをすることになるんじゃないかな。ファンの人たちと同じように、私も漢字さんのライブが見たいから」と、元どおり2グループで公演ができるのではないかという淡い期待を捨てきれずにいた。そんな地に足がつかないような心境だったにもかかわらず、リハーサルの内容は今までのライブよりはるかに負担が大きいものだった。まず、ツアーから大きくコンセプトを変えてまったく新しい演出にしたために、振り付けや曲中の移動が大幅に変更された。例えば欅坂46の語るなら未来を...は、けやき坂46のメンバーにとってほとんど踊ったことがない不慣れな曲だったが、今回の公演ではステージに組まれた2階建てのセットを上下に行き来するというかなりスピーディーな構成になった。

 

人一倍パフォーマンスをそろえることにこだわりを持っていた佐々木美玲は、特にユニット曲の完成度が低いことに不安を感じ、積極的にリハーサル後の自主練を引っ張っていた。しかし、目指しているレベルにはたどり着けず気持ちが焦るばかりだった。また、2ヵ月後に出るシングルの制作期間とちょうど重なっていたこともあり、リハーサルに割ける期間は実質1週間程度しかなかった。しかも井口眞緒や潮紗理菜、影山優佳らはその少ないリハーサル日さえも学業の都合で参加できないことがあった。そうした場合は、代役のダンサーを入れて行なったリハーサルの動画を家で見て自主練するしかない。メンバー全員で集まってパフォーマンスをおさらいし、精度を上げていくという振り固めの作業ができるような状況ではなかった。

 

とにかく全員がやるべきことを覚えるのに必死で、メンバーたちの顔からは笑いが消えていった。本番直前、通しのゲネプロを行なった後、演出家がメンバーを集めて厳しい言葉をかけた。「みんな、いつものハッピーオーラがない。武道館でやる覚悟ができてないのか?」。すでに、チケットは先行販売の時点で会場のキャパシティを大きく上回る応募数に達していた。メンバーやスタッフの予想以上に、ファンはけやき坂46の武道館公演に期待していたのだ。これを受けて、スタッフもメンバーを鼓舞した。「これだけの人が待っていてくれるんだから、もう勝ちに行くしかないだろう。伝説のライブにしようよ」。もう逃げることができないところまできてしまった。だったら、この不安な気持ちを乗り越えて、ピンチをチャンスに変えるしかない――。最後の土壇場になって、メンバーの間でこんな言葉が飛び交うようになった。「武道館、勝ちに行こう!」「伝説のライブにするよ!」。こうして、3日間で計3万人を動員するというグループ最大の挑戦にして、激動の2018年の幕開けとなるステージが開演した。

 

 

⑧ けやき坂46のカラフルな世界

 

この武道館公演のオープニングでは、華やかなロングコートに身を包んだメンバーたちが、ステッキやハットを使ったダンスを繰り広げた。その彼女たちが立っているステージには、カラフルな電飾が施された今までにない大掛かりなセットが組み上げられていた。ZeppTokyoに始まった前年の全国ツアーでは、ライブハウスのステージを前提としたシンプルな演出でパフォーマンスをしてきたが、この武道館で初めてテーマ性のあるショー形式の演出を試みたのだった。そのテーマはサーカス。武道館を巨大なサーカス小屋に見立て、メンバーたちが次々と出し物を披露していくという趣向だった。アリーナ席から天井近くまでを客席が埋め尽くす、すり鉢状の武道館の中心に立ったとき、佐々木久美は全身に鳥肌が立った。

 

「武道館は今までの会場と全然違う。まるで360度、お客さんに囲まれてるみたい。お客さんのコールが会場に響いて、地鳴りみたいに聞こえる」。また、本番直前までメモを必死に読み返すなど珍しくパニック状態になっていた潮紗理菜は、ステージに立った瞬間に気分が一変した。「ここに立ってると、まるで宇宙の真ん中にいるみたいだな。お客さんのサイリウムも星みたいに見える。ここまで大変だったけど、こんなにすごい景色を見せてもらえるなんて、私たちは死ぬほど幸せなんだ」。けやき坂46のライブでも恒例になっていた楽曲『二人セゾン』では、全国ツアーと同様に井口眞緒のソロダンスが披露された。そのパフォーマンスは、幕張メッセのステージで見せたものよりもさらにクオリティが上がっていた。実は武道館でソロダンスをすることになったとき、井口は今までになく頑強に拒否した。

 

「武道館3daysなんて絶対にいっぱいニュースになるのに、そこで一番へたな私がソロで踊るなんて、さらし者じゃないですか。ツアーも終わったんだからほかの人にやってもらいたいです」。しかし、涙を流しながら数え切れないくらいの練習を重ね、少しずつ成長する姿を見せてきた井口だからこそ、武道館でもこの大役を務める資格があった。スタッフやメンバーたちからほとんど叱咤されるように説得された結果、井口もついに腹をくくった。自分の踊っている動画を見直して、「私のこことここの動きがキモいんですけど、どうすればちゃんとしたダンスになりますか」とダンスの先生にひとつひとつ確認し、武道館公演が幕を開けてからもバックヤードで練習を続けた。その結果、「今までで一番の出来」と自分でも思えるパフォーマンスができた上に、ファンの間でもその上達ぶりが話題になった。

 

このときの井口のたった30秒のソロダンスには、1年近くに及ぶ努力の時間と、人は頑張れば成長できるというメッセージが確かに宿っていたのだった。そしてこの武道館公演のハイライトのひとつが100年待てばという曲だった。まだ長濱ねるがけやき坂46のメンバーだった頃から歌われている彼女のソロ曲で、この武道館公演ではけやき坂46の1期生全員でカバーした。ステージにはメンバーのほかにピエロや大道芸のパフォーマー、ダンサー、キッズも登場し、サーカスとミュージカルを合体させたようなポップな世界が展開された。実は、メンバー以外の人間が本格的にステージに上がるのは欅坂46/けやき坂46のライブではこれが初めてのことだった。それは、みんなと一緒に楽しく盛り上がるというけやき坂46の開かれた雰囲気をそのまま形にしたような演出だった。

 

そしてそのカラフルな世界観は、スタイリッシュなモノクロームの欅坂46の世界観と好対照をなし、両グループの違いを際立たせることになった。そんな重要な意味を持った曲が長濱ねるのソロ曲だったことは、けやき坂46が彼女から始まったという歴史から導き出された必然だったのかもしれない。この日、武道館の客席に長濱の名前が入ったタオルをいくつも見かけた高瀬愛奈は、「ねるちゃんはもういないけど、やっぱりいるんだな」と感じたという。その長濱ねるも2日目のステージを客席で観覧しており、終演後、メンバーのもとを訪れて感想を伝えた。「今日はひらがならしいハッピーオーラ満載のステージで、本当に本当に感動したよ。100年待てばも、みんなで歌ってくれてありがとう」。

 

そう言って泣きだしてしまった長濱を見て、加藤史帆は「ながるがなんで泣くの」と笑っていた。長濱はけやき坂46と欅坂46を兼任していた頃、常に「漢字のマネじゃない、ひらがならしさってなんだろう」と自問していた。しかしいつの間にか、残されたメンバーはハッピーオーラという答えをちゃんと自分たちのものにして、笑顔で活動していたのだった。また、前年の幕張メッセでお披露目のステージを踏んだばかりの2期生も、さらにパワーアップしたステージを見せた。ソロダンスやNO WAR in the futureのほかに、日替わりでセンターを代えながら乃木坂46の曲を3曲披露。カバー曲とはいえ、欅坂46ともけやき坂46とも違う新しい風をステージに吹かせたのだった。そしてこのライブのアンコールで初披露されたのが、1期生が歌う新曲イマニミテイロだった。それはこの武道館公演を象徴するような曲であり、けやき坂46の未来への覚悟を問う曲だった。そのセンターに抜擢されたのが、佐々木美玲だった。

 

 

⑨ 眠れずに送った午前4時のメッセージ

 

佐々木美玲は、けやき坂46に入った頃から「なんでもできるすごいコがいる」と長濱ねるも驚いたほど、歌、ダンスともにポテンシャルの高いメンバーだった。彼女自身は前に出ようとするタイプではないので目立たないが、グループ一のダンス力を持つといわれる東村芽依でさえも、よく美玲に教えてもらったりしていた。その美玲が、ドラマRe:Mindの頃から急速に存在感を増していることにスタッフは注目していた。それまでは後列端のポジションを与えられることが多かったが、ステージ上での美しい立ち姿はセンターにふさわしいオーラを放っていた。そんな美玲に、これから新しい一歩を踏み出そうとしているけやき坂46の顔として白羽の矢が立てられたのだった。だが、競争や人と比べられることが苦手な彼女は、それまでセンターというポジションを意識したことがなかった。この曲のポジション発表の際も、「センター、佐々木美玲」と言われて、本人は「2列目の真ん中のことかな」と思ったという。

 

そして、そんな彼女が自分で状況を理解するより先に、周りのメンバーから自然と拍手が起こった。なかでも、潮紗理菜は感極まって泣いてしまった。誰よりも高く跳べ!で美玲とシンメトリーのポジションになって以来、永遠のシンメと言ってお互いに認め合う仲だった。いつも「私はいいから」と言って人に譲ってばかりいる優しい性格の美玲がやっと認められたと思うと、潮は自分のこと以上にうれしくなり、こんな風に思った。「みーぱん(美玲)はいつもニコニコしていて、太陽みたいで、ひらがなけやきを象徴する人だと思う。私たちにとって胸を張って自慢できるセンターだよ」。この発表があった日の夜、初めてのセンターという重圧で眠れなかった美玲は、午前4時にメンバーのグループラインにメッセージを送った。「今日、センターって言われてすごくビックリしました。私は握手会も全然人気がないし、かわいくないし、センターなんてできるのかなって不安だけど、みーぱんなりに一生懸命頑張ります」。

 

そのイマニミテイロのMV撮影の日、モニターに映る自分の硬い表情を見て、彼女はさっそく落ち込んだ。「私、これじゃなんにも表現できてない、ただの無の顔だ」。その美玲に対して、振り付けを担当したTAKAHIROは「今までに悔しいと思ったことを思い浮かべて」とアドバイスした。ある日/突然/大人たちから/「やってみないか?」って言われて/どうするつもりだ?/臆病者よ/こんなフレーズで始まるイマニミテイロという曲は、武道館を任されることになった彼女たちの心境そのものを描いたような曲だった。そして、その試練から逃げずに立ち向かうための原動力が今に見ていろという気持ちだった。誰かの背中越しに/世の中/眺めてた/自分の番が来ても/パスはできないルール/イマニミテイロ/どういう色だ?/唇噛み締めながら頑張って来た色/心の奥で何度も呟いた/言葉は何色?/いつの日にかミテイロ/美玲は、この曲を歌いながら過去の悔しかったことを思い出してみた。

 

例えば、握手会に人が集まらなかったこと。例えば、欅共和国2017でアンコール後の挨拶に立てなかったこと......。すると今にも涙があふれそうになった。それは欅坂46へのライバル心などではなく、その後ろに立って前に出ようとしなかった自分に対する悔しさだった。欅坂46が大好きな美玲の中にも、「自分たちは自分たちで、ひとつのグループとして前に出なきゃいけないんだ」という気持ちが芽生えていた。この曲の圧巻は、2番のサビ以降のパフォーマンスだった。「イマニミテイロ」と歌いながら、メンバーたちが笑顔で拳を突き上げていく。過去の悔しさも立ちはだかる大きな壁も、笑顔で乗り越えようとするけやき坂46らしさが表されていた。武道館で初めてこの曲を歌ったとき、ラストで満面の笑みを浮かべてひらがなポーズをする美玲の顔がモニターに映ると、会場からは温かい拍手が送られた。それは、実に彼女らしい優しい笑顔だった。しかし、最終日となる3日目の終盤、誰もが驚くサプライズが待っていた。

 

 

⑩ 伝説の誰跳べダブルアンコール

 

イマニミテイロ披露後、メンバーたちが次の曲に移るために動きだした瞬間だった。モニターに突然、こんなメッセージが表示された。「メンバーのみなさん 3日間完走 本当にお疲れ様でした!」。そしてこの3日間の武道館公演のダイジェスト映像が流れた。昨日や一昨日のことなのに懐かしささえ覚えて、メンバーたちは涙を浮かべた。だが、本当のサプライズはここからだった。「武道館公演を成功させたひらがなけやきのさらなる成長に...次なる試練」。その試練という二文字に、ステージ上のメンバーたちが悲鳴を上げた。サプライズといえば辛い思いをした記憶しかない彼女たちにとって、次の言葉を知るのは恐ろしいことだった。しかし、続けて表示されたメッセージは予想もしていないものだった。「ひらがなけやき 単独アルバム! 発売決定!!」

 

メンバーたちの間から、今度は爆発するような歓喜の叫びが上がった。思いがけず嬉しい発表を受け、顔をグシャグシャにして抱き合うメンバーたちに、会場からも地鳴りのような歓声が送られた。発表の余韻が続くなか、グループを代表して佐々木久美が短くコメントした。「こんなにも夢が早く叶うとは思ってなかったので、ほんとにびっくりなんですけど......。うれしいです。ありがとうございます」。単独でのCDデビューは、前年のツアー中にメンバーたちが自主的に話し合って決めた目標のひとつだった。今まで欅坂46名義のCDのカップリング曲しか歌ったことがなかった彼女たちにとって、自分たちの名前で作品を出すことは最もシンプルで明確な目標であり、それだけに一番遠いもののようにも感じていた。

 

だが、1年近くにわたるツアーを完走し、武道館3days公演というとてつもない挑戦に勝ったけやき坂46は、今や単独デビューに十分見合うグループになっていた。そしてこの日のラストは、観客からのダブルアンコールに応えて誰よりも高く跳べ!を披露した。まだ持ち歌がほとんどなかった頃から、観客の心をつかむためには曲のどの部分でどうアオリを入れるか、どうすれば自分たちの気持ちを歌に乗せられるのか試行錯誤を続け、少しずつ育ててきたグループの代表曲だった。いつも中心になって声を張り上げている佐々木久美は、このダブルアンコールに今までにない空気を感じた。「私たちが声を出したら、今日はその何倍も声が返ってくる。すっごく楽しい!」

 

演出スタッフがインカムを通して「煽れ煽れ!今会場つかんでるから、もっと煽れ!」と檄を飛ばすと、影山優佳が「皆さん!もっともっと盛り上がっていくぞー!」と声を裏返らせながら絶叫した。楽曲の力に引っ張られ、メンバーも会場もリミッターが外れていた。誰よりも高く跳べ!という曲の真のポテンシャルが発揮された瞬間だった。ライブ後、誰もがやりきったという手応えとともに気持ちのいい疲労を感じているなか、柿崎芽実は不思議な感覚にとらわれていた。「また明日もここでライブがあるような気がするな。このままもう一回でも、3daysやれそう」。このけやき坂46の武道館公演はテレビやネットニュースでも大きく取り上げられ、「あの武道館3daysを成功させた、今一番勢いのあるグループ」という評価が高まった。この大きな挑戦は確実に彼女たちの明日につながり、グループを取り巻く環境を変えることになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

2⃣ 感想

 

 

加藤史帆の「こんなかわいいコたちがひらがなに入ってきてくれたんだ。私たちずっと漢字さんのアンダーって言われてたのに、そんなグループに入ってきてくれて本当にありがとう」という言葉が日向坂46の未来を予感させます。私も驚いたがひらがなけやき2期生のレベルの高さは異常レベルでよくこんなに揃ったなという言葉しか出ません。そしてその多くが長濱ねるに憧れて受けたという話を聞くとむべなるかなという気にもなります。欅坂46から日向坂46と長濱ねるが抜けることのマイナスの大きさはとてもではないが2期生だけでは補えないでしょう。更に原田葵の復帰も微妙で、米谷奈々未・長濱ねるの卒業が深く影を落としているようです。元々復帰しても両立は難しいと思っていますのでこのまま卒業と言うことも十分考えられます。

 

平手友梨奈が久し振りに冠番組で頑張っていましたから期待していましたがどうもそんなに甘くはなさそうです。人数的には増えましたが2期生のアンダー感は強く、平手友梨奈と9thシングルの出来次第としか言いようがありません。一方、スタートダッシュに大成功した日向坂46ではありますが、やはり先行きに不安を感じざるを得ません。確かに2期生/3期生のレベルの高さは出色ですが、それでも尚エースがいない弱さがあります。A評価のメンバーは沢山いるが、S評価のメンバーがいないのが今一つ爆発力を感じない理由でしょう。こちらも下手にセンターを代えずに小坂菜緒と2ndシングルに期待するしかないと思います。長濱ねるはもうとっくに日向坂46を離れているとはいえ、その存在感の大きさは後々まで尾を引きそうな雰囲気です。

 

早速、柿崎芽実と濱岸ひよりの2人が握手会を欠席していますが、心配しています。今日の記事にもあるが負けず嫌いの柿崎芽実ですから猶更ですが、冠番組やNHKの高校生講座には出演しているようですからその点は安心しています。2人とも長濱ねるの卒業やグループ名変更が堪えたでしょうから現在の体調不良が無関係だとは言えないでしょう。特に柿崎芽実はよくねるの部屋に泊まりに来るような関係だから特に心配しています。逆に影山優佳は「皆さん!もっともっと盛り上がっていくぞー!」と声を裏返らせながら絶叫したらしいから将来女総理を目指すスーパーウーマンの来年4月の復帰は頼もしい。もし日向坂46の伸びがなくてもパラダイムシフトが起こるパワーがあると思いますので、柿崎芽実・濱岸ひよりの復帰は必須だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【その他の情報】

 

 

 

1⃣ 欅坂&STU&日向坂&乃木坂&カラバト等(推しメン中心)スケジュール

 

 

05/06(月) 欅坂46/日向坂46の夕方パラダイスに尾関梨香・長沢菜々香が出演(16時40分~)

05/09(木) 欅坂46アニバーサリーライブ東京スペシャルin日本武道館3days

05/12(日) こちら有楽町星空放送局に尾関梨香が欅メンバーを迎えて送る(23時30分~)

 

 

 

 

 

※長濱ねるの握手会もいよいよ残すところ3回になりました。それに伴いまして卒業企画実行委員を募集しているようですから興味のある方は是非お申し込みください。推しメン候補の武元唯衣は1期生から人気のようで5人からプロポーズされましたから目標達成率を+5%にします。


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