2017年8月、約1ヵ月にわたって欅坂46の全国ツアーが行なわれた。その直前に発売された1stアルバム/真っ白なものは汚したくなるの収録曲を中心に据えた、欅坂46にとって初のツアーだった。けやき坂46も共に全国を回り、新曲/永遠の白線をはじめとする数曲をパフォーマンスした。また、その合間を縫って秋からスタートするけやき坂46の初主演ドラマ/Re:Mindのためのワークショップも行なっていた。8月半ばには、けやき坂46の2期生オーディションの最終審査も行なわれ、新たに9人の新メンバーが発表されていた。そして8月末、欅坂46の全国ツアーが千秋楽を迎えた。次は、中断していたけやき坂46のツアーが再開される予定だった。
ひらがな第一章:https://ameblo.jp/kablogkun/entry-12449697758.html
ひらがな第二章:https://ameblo.jp/kablogkun/entry-12451548271.html
ひらがな第三章:https://ameblo.jp/kablogkun/entry-12452968835.html
ひらがな第四章:https://ameblo.jp/kablogkun/entry-12454715406.html
1⃣ ひらがなけやき第五章
① 兼任が限界を迎えた夏のツアー
9月後半のある日。都内スタジオで欅坂46の冠番組/欅って、書けない?の収録が行なわれていた。この回にはけやき坂46も参加していたが、先輩の欅坂46より先に収録を終えて楽屋に戻ってきたメンバーたちは、スタッフからこう告げられた。「今後、長濱ねるはひらがなけやきとの兼任を解除し、漢字専任になります。これから漢字もひらがなもますますスケジュールが厳しくなるなかで、本人の体調を考慮した結果です。今月26日に行なわれるひらがなのZeppSapporo公演にも出演しません」。突然の知らせにけやき坂46メンバーたちは固まった。長濱はけやき坂46の唯一のオリジナルメンバーであり、今までどのステージも長濱を中心に回ってきた。その長濱がいなくなる――。
けやき坂46と欅坂46を兼任していた長濱は、以前からずっとスケジュール面での苦労を抱えていた。2017年春からけやき坂46の全国ツアーが始まり、単独のグループとしての活動が本格化したときも、長濱だけは並行して欅坂46の主演ドラマ/残酷な観客達の撮影に参加していた。その兼任の負担にいよいよ対処できなくなったのが、欅坂46の夏のツアーが始まった頃だった。欅坂46にとって初の全国ツアーであり、半数以上の曲が初披露となったこのライブは、他のメンバーたちにとっても過去に経験したことのない正念場だった。長濱は、欅坂46メンバーとして新曲のダンスの振り入れやリハーサル、各種フェスやメディアへの出演を行ないながらも、少しでも時間をつくってけやき坂46に合流し、短時間でリハーサルをこなすという日々が続いていた。
長濱が永遠の白線の振り入れをできたのも、初披露の前日だった。ライブのセットリストにおいても、両グループに所属する長濱は必然的に出ずっぱりになる上に、ソロ曲まで担当していた。加藤史帆は、この時期の長濱のことを思い出すと、いつも泣いている顔ばかりが思い浮かぶ。途中からけやき坂46のリハーサルに合流して振りについていけず、「ごめんね」と涙目で謝る長濱を見て、加藤は「ねるちゃんは自分が一番大変なのにどうして私たちに謝るんだろう」と思っていた。佐々木美玲も「こっちに来てくれるだけで私たちはありがたいのに、いつも謝ってばかりで、ほんとに謙虚だな」と感じていた。しかしひとりの人間がふたつのグループに所属する無理は、スケジュール的にも体力的にもすでに限界を超えていた。それでも兼任を全うしようとする長濱に代わって、運営側が決断しなければいけないときが来ていた。
メンバーたちが長濱の兼任解除を知らされてから数日後、欅って、書けない?の放送と同時に運営からの公式コメントが発表された。「(以下、発表の一部を抜粋)ひらがなけやき主演ドラマのお話をいただいてから、撮影の準備を進めてまいりましたが、全国ツアー後、漢字欅の稼働もさらに多忙を極め、これ以上長濱が漢字欅とひらがなけやきを兼任しての活動は本人の体調を考えた結果、困難と判断しました。
運営で協議を重ねた結果、長濱は漢字欅にとっても重要なメンバーであり、ひらがなけやきが新メンバーを迎えて新たな一歩を踏み出す今、長濱の兼任を解除、漢字欅専任となり活動を続けることを決定しました」そもそも、グループに加入したときからずっと欅坂46とともに活動し、けやき坂46の追加メンバーが決定した直後から欅坂46を兼任することになった長濱は、楽曲のパフォーマンスその他においてもはや欅坂46に欠かせない存在だった。
一方のけやき坂46はこれから全国ツアーを再開し、初主演ドラマの撮影に入り、さらには2期生も合流して新しく生まれ変わろうとしている――。この状況のなかで長濱を守るために取りうる最良の手段が、けやき坂46との兼任解除、および欅坂46への専任という道だった。この処遇について、齊藤京子は「ついに来たんだ、このときが」と感じた。けやき坂46メンバーの誰もがいつか長濱の兼任が解除されることをうすうす予感していた。そして高瀬愛奈が「やっぱり漢字専任になるんだ。漢字にいるときのねるちゃん、キラキラしてるから」と思ったように、欅坂46への専任は納得せざるをえないことだった。テレビに映る欅坂46や長濱ねるに憧れてオーディションを受けた彼女たちにとって、長濱はいつまでも自分たちの一歩前を歩く存在だったのだ。しかし、残された自分たちはいったいどうすればいいのだろう?
② 悩みの中で知ったハッピーオーラ
3月に行なった東京公演に始まり、大阪、名古屋とセットリストを変えながら作り上げてきたけやき坂46の全国ツアーは、ここにきて大きな修正が必要になった。これまで12人でパフォーマンスしてきた楽曲のフォーメーションをすべて長濱抜きの11人仕様にするとともに、長濱の歌っていたパートをほかのメンバーに割り振っていかなければならない。すでにドラマ撮影も始まり、いつもより少ないリハーサル時間のなかで、修正の作業は新しいセットリストを頭からさらいながら行なわれた。「ここで柿崎がねるの位置に入って、ほかのメンバーは上手から詰めて......しまった、ここのねるのパート、誰も歌ってないぞ」。スタッフもその場その場で修正点を洗い出していき、メンバーはその指示に必死についていった。
さらに、この全国ツアーでは毎回チャレンジ企画が用意されており、次の北海道公演でもマーチングドラムを披露することになっていたが、この練習もドラマの休憩時間にスタジオの裏にみんなで集まって行なったりしていた。しかし、そうした物理的な負担よりもメンバーに不安を与えていたのは、精神的な喪失感だった。けやき坂46の楽曲で長濱とWセンターを務め、長濱にとっても心を開ける相手だった柿崎芽実は、長濱のことを思うたびに涙が止まらなくなった。「どうしてねるがいないんだろう。寂しいな。私は今までずっとねるに頼ってばかりで、ねるがいないと何もできなかったんだ」。高本彩花は、慣れないドラマ撮影とライブのリハーサルを行ないながら、心もとなさを強く感じていた。「ひらがなけやきはねるちゃんから始まったグループなのに、ねるちゃんがいないひらがなけやきって、いる意味があるのかな。私たちを見たいっていう人なんているのかな」
長濱抜きにしてはグループの存在理由がないと誰もが思っていた。長濱を見るために北海道公演のチケットを買ったファンからブーイングを受けるのではないか、そんな悪い予感にも押しつぶされそうだった。それは、かつて活動のない日が続き解散も覚悟した頃のネガティブな状態に似ていた。そうやって身も心も疲れてくると、リハーサルでもうつむくことが多くなった。そんなとき、佐々木久美はメンバーに向かって大げさなほど明るく言った。「ねぇねぇ、ハッピーオーラだよ。ハッピー!」。満面の笑みで「ハッピー」と口にすると、不思議と誰もが笑顔になって元気が出るのだった。このハッピーオーラという言葉を知ったきっかけは、彼女が悩んでいるときにスタッフからもらった一言からだった。
「崖っぷちにあるとき、ひたむきに頑張るその姿勢が、ひらがなの持つハッピーオーラなんだよ」。佐々木久美は、この言葉を聞いたとき救われたような気がした。ライブを重ねるなかで漠然と見えてきたけやき坂46のカラー――見ている人を笑顔にするというグループのあり方をひと言で表してくれる言葉が、このハッピーオーラだと思った。欅坂46の夏の全国ツアー中、佐々木久美がこのフレーズをたびたび口にするようになると、自然とほかのメンバーの間にもそれが浸透していった。影山優佳は、このハッピーオーラという言葉がこれまで自分たちが取り組んできたことやこれからするべきことと一直線につながっていることに気づいた。「3月の東京公演の後にみんなで決めたお客さんと一体になって盛り上がるっていう目標は、このハッピーオーラに通じてたんじゃないかな。これからは、私たちのハッピーオーラを届けるんだって気持ちでステージに立てば、私たちにしかできないライブができるはずなんだ」
やがて夏の全国ツアーが千秋楽を迎える頃には、ハッピーオーラはけやき坂46メンバーたちの共通の合言葉のようになっていた。欅坂46がクールだと世間から評価されていたのに比べ、自分たちには何も誇れるものがないと思っていた彼女たちが、初めて自分たちだけの個性をつかみかけていた。何より、その言葉は長濱ねるが抜けて不安な気持ちに陥っていたメンバーたちに、前へ進む勇気を与えてくれた。北海道公演の前日、柿崎のブログにはこんな言葉が記されていた。「新しく2期生も入って20人になったけやき坂46。きっとここからが本当のスタートです。また0から1つ1つ丁寧に積み重ねていって、初心と感謝の気持ち、謙虚・優しさ・絆を忘れず、私達らしく、ハッピーオーラ全開で☆誰にでも愛される素敵なグループになろうと思います!」
③ 心や曲の中に存在する長濱ねる
9月26日、北海道札幌市にあるライブハウス・ZeppSapporoで、けやき坂46の全国ツアー北海道公演が行なわれた。オープニングは最も懸念されたドラムパフォーマンスだった。ただのひとりも経験者がいないところから練習を重ね、重いドラムを抱えて難しい技にも挑戦した。途中、器材が外れて演奏できなくなったメンバーもいれば、コンビネーションがうまくいかない箇所もあったが、諦めずに笑顔で演奏を終えた。長濱ねるのいないけやき坂46をファンに受け入れてもらえるかはわからなかったが、彼女たちにできることはハッピーオーラを意識して笑顔でパフォーマンスをすることだけだった。この日の最初のMCで、佐々木久美が意を決したように言った。「ここでひとつお話があるんですけど、今日はねるちゃんはいなくて、私たちはそれぞれの道を歩み始めました」
そのとき、客席から「頑張れー!」という声が聞こえてきた。そして満員の会場からは、今までに聞いたことがないほどの大きな声援が送られてきた。なかには長濱ねるのタオルを掲げながら笑顔で自分たちの名前をコールしてくれるファンもいた。ライブ前は自分たちを見に来てくれるファンなどいるのだろうかと不安に思っていた高本彩花は、目の前の光景を見てはっきりと確信した。「私たちには支えてくれる人がこんなにいるんだ。この人たちがいてくれる限り、私たちはこれからも頑張れる」。この日、初めて長濱抜きの11人でステージに立ち、12曲を披露した。
フォーメーションや歌割りを変更したことで曲中にぶつかってしまったり振りがそろわなかったりする場面もあったが、ハッピーオーラを貫いて気持ちは常に前を向いていた。特にひらがなけやきをはじめとするグループのオリジナル曲は、どれも明るく優しい笑顔が印象的だった。それは、センターを務めていた長濱ねるが持っていた太陽のような雰囲気そのものだった。また、永遠の白線には各メンバーが自分の特技や特徴にちなんだポーズを順に取っていく箇所があるが、この日はその最後で全員が頬に手を添えて目をつむった。寝る=ねるがまだそこにいることを伝えるためにみんなで考えた演出だった。アンコール明けの最後のMCで、佐々木久美は言葉を詰まらせながらも思いの丈を語った。
「長濱ねるちゃんひとりから始まったひらがなけやきが、12人になってこんなにたくさんの方に応援していただけるようになって」 「でもそれはねるちゃんの努力とか私たちには計り知れない苦労があってこそだと思うんです。だからリハーサルでねるちゃんのいたところを埋めてやらなきゃいけないっていうことがすごく悲しかったんですけど(中略)でもひらがなけやき12人でやってきた歴史がなくなってしまうわけではないので。この12人でやってきたことを糧に、新しい頼もしい新メンバー9人と総勢20人で、これから皆さんにどんどん好きになってもらえる大きなグループになりたいと思っているので、これからも私たちの応援をよろしくお願いします」。長濱ねるはそこにいなかったが、メンバーの心の中やけやき坂46の曲の中にはまだ確かに存在していたのだった。
④ 初めて心が通じ合えた30分
実は公演の前日、北海道へ向かう前の最後のリハーサルをしているとき、レッスン用のスタジオにいるメンバーたちのもとを長濱ねるが訪れた。自分自身、兼任解除の知らせを聞いてから一度もけやき坂46のメンバーに会えていなかった長濱が、どうしても彼女たちと話をしたいと思い、スタッフに無理を言ってスタジオに寄ってもらったのだった。彼女たちに許された時間は30分間。スタッフは全員スタジオの外に出て、メンバーだけで話をした。長濱が涙をこらえながら謝った。「最後、一緒にライブに出れなくて本当にごめんね。私も出たかったけど、こうなったことはもう仕方がないから、受け入れてお互い頑張ろうね」。こう言ってけやき坂46のメンバーを励まそうとしたが、一番傷ついていたのは長濱自身だった。
夏の欅坂46のツアーの間、自分が欅坂46にもけやき坂46にも中途半端に参加しているせいでパフォーマンスの質を落としているとずっと感じていた。だからツアーが千秋楽を迎えたとき、ブログでこんな宣言をした。「自分の力不足を、痛感し、パフォーマンスを磨く1年にすると決めました。何も言わずにこっそり練習して気づかれる方がかっこいいけどね、まだ私は強くないので誰かに宣言してから頑張ろうって。自分にとってリスタートの年にしたいです」。またここから再出発して兼任の役割を全うしたい。そう思っていた矢先の兼任解除だった。自分にもっと力があればけやき坂46のメンバーにも迷惑をかけなかったと思うと、不甲斐なさとメンバーに対する申し訳なさでいっぱいになった。
しかしそんな彼女を逆にけやき坂46のメンバーたちが口々に慰めた。「ねるちゃんが謝ることなんて全然ないんだよ。私たちみんなねるちゃんに感謝しかないんだから。私たちはねるちゃんが安心して漢字さんの専任で活動できるように、これからもっと頑張るからね」。長濱はこのときまでけやき坂46のメンバーの前でずっと気を張っていた。自分ひとりしかいなかったグループに入ってきてくれた少しだけ後輩の11人のために、自分は強くなければいけないと思っていた。ただそれはひとりよがりな考えだった。
「この子たちはどうしてこんなに私に優しいんだろう。この優しさは無償の愛なんだな。私はこんなにみんなに愛してもらってたのに、なんでもっと早く打ち解けられなかったんだろう」。兼任解除されて初めて、ほかのメンバーの気持ちを知り、心が通じ合えた気がした。そして、自分との別れを泣いて惜しんでくれるメンバーたちにこう伝えた。
「あのね、欅坂46っていうグループは、漢字の欅坂46とひらがなのけやき坂46の2チームでできてるんだよ。だから私が漢字専任になったとしても、みんなとは同じ欅坂46のメンバーだっていうことは変わらないんだよ。......だからこれが永遠の別れじゃない」。長濱のシリアスな言葉を受けて、齊藤京子がすぐさま応えた。「それもそうだね、握手会とかでまた会えるしね」。齊藤のいつものピントはずれの言葉に、全員が「また京子が」と笑ってしまった。だが、このときの齊藤は、長濱にこれ以上泣いてほしくなくてわざとこんなことを言ったのだった。けやき坂46メンバーにとっても、今までどこか遠くて気を使う存在だった長濱ねる。そんな長濱と初めて本音で話し、笑い合うことができた。兼任解除という事態になって初めて、けやき坂46は本当に12人のグループになれたのだった。
⑤ ハードルが高い密室の中の会話劇
2017年10月期の深夜ドラマとして放送された、けやき坂46の初主演ドラマ/Re:Mind。これより前に、欅坂46の2本目の主演ドラマ/残酷な観客達に全員で出演したことはあったものの、そのときは最終話のラスト5分だけというゲスト扱いの出演だった。そのため、実質的にはこのRe:Mindがけやき坂46メンバーにとって初の本格的なドラマ出演作であり、また初めての演技の仕事となった。実はこのドラマ出演の話を最初に告げられたとき、素直に喜べないメンバーも多かった。新しいジャンルの仕事に漠然とした不安を抱いていた佐々木久美は、「私にはお芝居はできないんじゃないかな。よし頑張ろうっていう気持ちよりも、大丈夫かなっていうほうが大きい」と感じていた。
また、欅坂46の出演作のメイキング映像を見て、演技がうまくいかずに泣いていた先輩たちの姿が強く印象に残っていた高本彩花は、「私たちもお芝居をしたらああなっちゃうのかな。お芝居ってすごく怖いんだ」と怯えてさえいた。事実、演技未経験の彼女たちにとってこのRe:Mindというドラマはかなりハードルが高い作品だった。けやき坂46のプロデューサーでもある秋元 康原案のストーリーは、次のようなものだった。ある日、見も知らぬ部屋に閉じ込められた11人の少女たちが、失踪した同級生にまつわる記憶をたどりながら、誰がなんの目的で自分たちを監禁しているのかを探っていく――。ドラマの形式としては完全なる密室の会話劇になるので、セリフ、リアクションといった基本的な演技力だけで映像をもたせなければいけない。加えて、ほとんどのシーンが彼女たちメンバーだけで進行することから、経験値の高い共演者の芝居に頼るということもできなかった。
そんな難しい仕事に臨むメンバーたちのために、ドラマ撮影に先立ってワークショップが行なわれた。指導を主に担当したのは、刑事ドラマやサスペンスで実績を残している演出家の内片輝。プロの役者向けのワークショップも多く行なっており、育成には定評があったが、今回は全員が未経験者だったために複数回にわたって指導が行なわれることになった。まず内片からワークショップの概要が説明される。「これからやることで、お芝居ってこういうことなんだよっていう基本的なことを覚えてもらいます。それは今回のドラマだけじゃなくて、舞台にも、もちろん歌とかMVでちょっとしたお芝居をやるときにも使える。基礎のステップのようなものです」。ここでメンバーたちと相対した内片が抱いた印象は、「想像してたより素人っぽい子たちやなぁ」というものだった。
新人俳優であっても、芸能人であれば自分をよく見せようと強がる者も多いし、常に人前に立っているアイドルならそれなりにプライドもあるだろうと想像していた。しかし、けやき坂46のメンバーは最初から謙虚で、控えめな態度だっただけでなく、不安と緊張感でいっぱいなことさえも手に取るようにわかった。
だが、初日のワークショップ中に明らかに空気が変わった瞬間があった。ふたりひと組でペアになって、ひとりが「辞めないで」と言い、相手は「辞めたくない」と返す。ただこれだけのやりとりを何度も重ねるというレッスンに取り組んだときのことだった。試しに、佐々木美玲と影山優佳が前に立って芝居をやってみる。美玲が「辞めないで」と心をこめて言うと、最初は静かに返していた影山の感情が徐々に高ぶり、ついには号泣して「辞めたくない」と訴えた。最後にはふたりとも涙が止まらず、芝居が打ち切られた後も思わず抱き合ってしまった。
これが内片が大事にしている自然な生理から発した芝居というものだった。続いて芝居をしたほかのメンバーたちも、次々と感情を露にしていった。それにしても、この「辞めないで」という言葉に対するメンバーの反応が異様に鋭いことに内片は驚かされた。それは、厳しい芸能活動をするなかで誰もが一度は抱いたであろう「辞めたい」という感情や、もしかするとお互いにそんな相談をした日の記憶をも引き出してしまったからかもしれなかった。欅坂46の全国ツアーの合間を縫い、7月後半から2ヵ月弱にわたってワークショップは行なわれた。そして9月中旬、いよいよクランクインの日を迎えた。秋元 康原作、けやき坂46初主演ドラマ/Re:Mind。2017年10月19日深夜からテレビ東京系で放送されたほか、Netflixでも先行配信され話題になった。
⑥ 初めての過呼吸で思い知った演技の力
古い洋館のような不気味な部屋の中。大きなテーブルを囲んで、赤い頭巾をかぶせられた11人の少女たちが眠っている。物語の冒頭は、彼女たちがひとり、またひとりと目覚め、自分たちの置かれている状況を認識するというシーンで始まる。このたった1シーンのために、複数の撮影日が費やされた。このシーンで叫びながら目覚めることになっていた高本は、うまく芝居に入れず、ドラマの序盤の監督も務めていた内片に言った。「私、もっと大きい声を出さなきゃいけないんですか......?」。台本にも書いてあるとおりのわかりきったことだったが、思わずすがるように尋ねてしまった。そしてポロポロと涙がこぼれてきた。芝居に慣れていない人間が、声を出すことを恐れるあまり極度の緊張に襲われ、よけいに芝居ができなくなるという状態の典型だった。
また、よく泣くメンバーたちの中でも特に泣いていた東村芽依のことが心配になった内片が、グループのまとめ役だった佐々木久美に「彼女は今日、何かあったの?俺はフォローしたほうがええんかな?」と相談したこともあった。しかし、久美の答えは「いつもこうなので、気にしないでください」というあっさりしたものだった。実際そのとおりに放っておくと、東村はいつの間にか泣きやんで周りのメンバーとニコニコ笑っていた。不思議な仲の良さがあるグループだと思った。そんななかで、井口眞緒は初めての撮影に胸をときめかせていた。昔からドラマが好きで、「ドラマに出てくるような場所で暮らしたい」と思い新潟から首都圏の大学に進学してきた井口にとって、本物のドラマのセットやカメラが並んでいる光景は見ているだけでテンションが上がるものだった。
ワークショップのときはうまくセリフをしゃべることができなかった井口は、自分では演技にまったく自信を持っていなかった。だが、実は彼女はセリフの流れや感情を理解する力が高いということにプロのスタッフたちは気づいていた。逆に潮紗理菜は、滑舌も良く、セリフをしゃべらせれば抜群にうまかった。普段から話すことが好きな人間ならではの特長だった。こうしたそれぞれの適性に合わせ、クランクインまでに脚本が練られていった。この作品では、回を追うごとに登場人物がひとりずつ消えていくという設定があったが、序盤に消えたのは芝居のポテンシャルが高いメンバーばかりだった。どの役も消える前は長いセリフや見せ場が用意されていたために、序盤に芝居のできるメンバーを置いて作品を視聴者に印象づけるためでもあった。
そのもくろみどおり、潮が消えるシーンでは「ごめんなさい、ごめんなさい」と連呼する彼女の鬼気迫る演技が視聴者に衝撃を与えた。このシーンをよく見ると、周りのメンバーたちも目に涙を浮かべているのがわかる。実はこのとき、実際に潮は人生で初めて過呼吸になり、その様子を見ていた周りのメンバーも気持ちが引っ張られて涙を流していたのだった。演技というものに入り込むと、時に過呼吸になるほど自分の体が動かされてしまう。カットの声がかかった後、メンバーに肩を抱かれながらも潮は「本気で芝居したら、こんなになっちゃうんだ。もっと早く知れたら良かったな」と思っていた。芝居の持つ本質的な力に少しだけ触れた瞬間だった。
⑦ 美玲が頑張ってるのはわかってるから
次々と人が消えていくなかで、終盤まで作品を引っ張ったメンバーのひとりが佐々木美玲だった。相手のセリフをよく聞いて、感じたままの気持ちを芝居に乗せられる彼女の反応の良さは、ワークショップのときから高く評価されていた。ドラマの中では、冷静な推理で謎に迫っていく優等生を演じ、多くのセリフを担当した。しかし、そんな美玲でも中盤になってセリフがまったく出てこなくなったことがあった。今回のドラマ撮影で演出陣から出たたったひとつの要求は、「意味も言い方も考えなくていいから、とにかくセリフを覚える」ということだった。しかし、時にひとりのセリフが10ページも続くことがあったこの作品では、台本を覚える苦労も並大抵ではなかった。それまで美玲もなんとかセリフを頭に入れていたが、なぜかその日は何度やってもセリフが出てこなくなった。
撮影は一時中断され食事の時間になったが、その間も台本を何回も読み直した。焦りで涙を浮かべながら台本をめくっている美玲を見て、この回で監督を務めていた演出家の石田雄介がスタジオの外に彼女を呼び出した。「美玲は今までちゃんとセリフを覚えてきてたし、頑張ってるのはわかってるから」。初めてのドラマ撮影に必死でついていこうとしていた自分のことを見ていてくれた人がいる。そのことに美玲は心を打たれ、号泣してしまった。そして撮影再開後、無事にこのシーンを撮り終えることができた。スタッフの期待を受け、難しい役どころに挑戦したメンバーはほかにもいる。齊藤京子は、11人の登場人物の中でひとり、常に激しくわめいて怒りをまきちらすクセの強い役を演じた。彼女にこの役を任せたことはスタッフ陣にとっても賭けだった。
この役は、特殊に見えて実は最も一般視聴者に近いキャラクターだった。「おかしいだろこれ!」「もうワケわかんないわ」といった直球のセリフは、現実にこうしたシチュエーションに陥ったときに普通の人間の口から真っ先に出てきそうな言葉だった。このキャラクターこそ、異様な設定のドラマと現実の視聴者をつなぐためになくてはならないものだった。しかし、ワークショップのときの齊藤は演技力の面でも性格面でもとてもこの役を任せられそうなタイプではなかった。実は齊藤もこのドラマ出演の話を聞いて不安を抱いていたひとりだった。歌手を目指して歌とダンスに邁進してきた齊藤は、自分の中で「私には演技はできない」と勝手に思い込んでいたのだ。あるとき、ワークショップが終わってから齊藤は内片に呼ばれてアドバイスを受けた。
齊藤ならもっとやれると思ってのことだったが、齊藤は「やっぱり私が一番へただから呼ばれたんだ」と思った。そして話を聞いているうちに泣き出してしまった。人前で絶対に涙を見せなかった齊藤にとって、けやき坂46に入ってから2度目の涙だった。それほど演技に対して苦手意識を持っていたにもかかわらず、クランクインを迎えると齊藤は今までのことが嘘のように芝居が楽しくなった。その低い声とさばさばした話し方が絶妙に役にマッチしていたのだ。齊藤は撮影に入る前、監督の内片からこんなことを言われている。「この役は重要な役やけど、これをやれるのは齊藤しかおらん。齊藤に任せた。もしかすると視聴者に嫌われるかもしれへんけど、それは齊藤がちゃんとこの難しい役をできたという証拠やから、間違いじゃない」。この言葉を信じて素直に役に飛び込んだからこそ、つかむことのできた演技だった。
こうして40日以上に及んだドラマ撮影のなかで、メンバーたちは次々と演じることに目覚めていった。Re:Mindという連続ドラマは、完全なるフィクションでありながら、けやき坂46のメンバーたちが変化していく様をとらえたドキュメンタリーでもあった。そして、変わったのは演技面だけではなかった。この期間を通じて、人間として大きく成長したメンバーがいた。それが高瀬愛奈と高本彩花だった。けやき坂46にとって初の本格的なドラマ出演作となったRe:Mind。密室を舞台にしたほぼ完全な会話劇で、本物のセリフを言う力、演技力が試されるというハードルの高い作品だった。事前に行なわれたワークショップでは不安を感じていたメンバーも多かったが、クランクインした後はひとり、またひとりと演技の面白さに目覚めていく。そして約2ヵ月間に及んだこのドラマの撮影期間中、演技面だけではなく人間的に大きな変化を遂げたメンバーがふたりいた。
⑧ 生きる上で笑うことは必要ないと思っていた
ドラマの撮影に入ってからしばらくたったある日。リハーサル中のスタジオに監督の声が響きわたった。
「高瀬だぞ!」。そう言われた高瀬愛奈は、きょとんとした表情を浮かべていた。本来、ここで高瀬がセリフを言うはずだったが、ボーッとして忘れていたのだ。この監督との些細なやりとりが面白かったらしく、メンバーの間ではしばらく「高瀬だぞ」という言葉がブームになった。実はそれまで、ほかのメンバーにとって高瀬は少し近寄り難い存在だった。ドラマの設定上、高瀬と向かい合って芝居をすることも多かった高本彩花は、高瀬と気軽に話せる関係になってからこんなことを打ち明けた。「今まで、まなふぃってすごい話しかけづらかったの。あんまり笑わないし何考えてるのかわかんなかったから。でも、実はすっごい変で面白い人なんだね」
高瀬は小学4年生から中学1年生までの間、親の仕事の都合でイギリスに住んでいたことがある。現地の学校に通う日本人は高瀬ひとりだったが、すぐに友達をつくってラクロスやテニス、数学クラブその他いくつもの部を掛け持ちするようになった。先生の話をノートに写すだけではなく、自分の手で教材を使って学ぶイギリス流の授業も楽しかった。そしていよいよ日本に帰るというとき、高瀬は友達の前でこんな宣言をした。「日本で有名人になってテレビに出るから、絶対見てね」。当時は夢や目標と言えるほどはっきりとは意識していなかったが、ドラマやミュージカルが好きだった高瀬は、このときすでに芸能界への憧れを抱いていた。しかし、楽しかったイギリス時代に比べて日本の学校は面白く感じられず、中学・高校を通して仲のいい友達もほとんどできなかった。
その頃から思っていたのは、「生きていく上で笑うことは別に必要ない」ということだった。周りに合わせて無理に笑うよりも、ひとりでいるほうが楽だったのだ。高3でけやき坂46のメンバーになってからも、高瀬はほかのメンバーとなかなか打ち解けなかった。面と向かって相手の名前を呼ぶのも恥ずかしかったので、向こうから話しかけられるまではいつも黙っていた。また、写真撮影のときに笑顔をつくるのが苦手だったので、口角を上げるための矯正グッズを使ってこっそり笑い方の練習をしたりもしていた。グループに入ってからしばらくたった頃、W-KEYAKIZAKAの詩という曲のMV撮影が行なわれることになった。欅坂46とけやき坂46の全メンバーが参加する初めての合同曲だったが、両グループの中で高瀬だけが学業の都合で撮影に参加できなかった。
MVはいったん公開されたものの、後に高瀬を交えて全員バージョンの再撮が行なわれることになった。そこで再びけやき坂46のメンバーが集まったとき、「よかったね」と喜んでくれるほかのメンバーに対して、高瀬はただ謝っていた。「愛奈のせいで、ごめんね」。グループにとって大事な曲のMVを完成させることができたのは、本当によかったと思う。ただ、こうしてメンバーやスタッフに再撮の手間を取らせてしまったことが申し訳ないと思っていた。いまだにメンバーと距離があった高瀬には、一緒に撮影ができることを素直に喜んでくれているほかのメンバーの気持ちが伝わっていなかったのだ。そんな高瀬が実は愛すべきキャラクターだということに最初に気づいたのは、柿崎芽実だった。
Re:Mindの現場でずっと高瀬の隣に座っていた柿崎は、勉強ができる割によくセリフを飛ばしたり、忘れ物をしたり、いつもボーッとしているような高瀬のダメなところに気づいた。そして柿崎が高瀬のことをいじり始めると、ほかのメンバーも高瀬の周りに集まってくるようになった。やがて高瀬はこの現場で一番の人気者にさえなった。高瀬のほうもドラマの撮影を通じて何かが変わってきていた。最初はアイドルとしての恥じらいが捨てられず、思い切り泣いたり叫んだりすることができなかったが、日を追うごとに自然と体が動いて感情表現ができるようになってきた。
ずっとスタジオにいると、役と自分の区別がつかなくなるという不思議なことも起こった。柿崎と最初に近づけたのは、役の上でもふたりがコンビだという設定があったからだった。そしてドラマが終わってからしばらくたったある日、高瀬はメンバーたちからこんなことを言われた。「まなふぃって、ドラマのときからすごい変わったよね。よく笑うようになったじゃん」。確かに自分が前とは違うことに高瀬自身も気づいていた。何より、メンバーと一緒に活動をしている時間が楽しく感じられるようになった。あの笑顔の矯正グッズは、もう使うこともなく、いつの間にかカバンの奥にしまいっぱなしになっていた。
⑨ オーディションに落ちて芽生えた気持ち
Re:Mindを通じて仕事の楽しさに気づいたもうひとりのメンバーが、高本彩花だった。高本はもともとアイドルや芸能が特に好きなタイプではなかった。しかし高校2年生のとき、AKB48グループのメンバーが出演していたドラマ/マジすか学園をたまたま見てハマってしまった。なかでも当時SKE48に在籍していた松井玲奈の大ファンになった。皮肉なことに高本が好きになった直後に松井は卒業を発表したが、もう二度と見られないかもしれない松井の歌う姿に触れたくて、父親の運転する車で卒業コンサートを見に行った。それが初めて生で見たアイドルのライブだった。この頃ちょうど結成されたのが欅坂46だった。実は高本はこの欅坂46のオーディションも受けている。「アイドルになったら松井玲奈さんに会えるかも」という単純な動機だった。
このときのオーディションには途中で落ちてしまったものの、初めて審査員の前で自己紹介をしたり歌ったりするという経験を通して、高本の中に新しい気持ちが芽生えていた。「もし私がこのグループに入ってたら、今頃どんなことしてるんだろう。あの制服を着て一緒にテレビに出たら、どんなふうに自己紹介するのかな」。欅坂46の冠番組/欅って、書けない?を見ながら、高本は自分がアイドルになった姿を何度も何度も想像していた。やがて番組に長濱ねるが登場し、新たにけやき坂46というグループがつくられると発表されたとき、高本はすぐにオーディションに応募したのだった。そして数ヵ月後、けやき坂46のメンバーになって初めて長濱と会えた日、高本は涙が止まらなかった。自分も受けていた欅坂46のオーディションを最終審査直前で辞退し、結果的にけやき坂46の最初のメンバーになって自分をアイドルの世界に導いてくれた人が、今、目の前にいる。
高本にとって長濱は特別以上の存在だった。そんな高本がアイドルとしてさまざまな経験をするなかで、一番印象に残った現場がRe:Mindだった。クランクインする前は「お芝居ってすごく怖いんだ」と思い込み、表現することを恐れていた。最初のシーンの撮影でも、うまく声を出せずに泣いてしまった。だが、一度思い切って声を出してみると、途端に演技することが楽しくなった。何より、現場の空気が好きになってしまった。この作品に関わっていたスタッフは皆仲が良く、メンバーに対しても決して怒らず成長を見守ってくれた。ドラマの設定上、物語の進行に合わせてひとりひとり登場人物が消えていったが、そのたびにメンバーの名前にちなんだ粘土細工をこっそりセットに忍ばせておいて、彼女たちを和ませてくれるような遊び心もあった。
そんな雰囲気のなかで、高本は裏方の仕事に強い興味を持つようになった。「カメラの横についてるこれ、なんですか? どうやって使うんですか?」。毎日のように自分の知らないことを発見してはスタッフに聞いてみた。自分も同じように仕事をしてみたくなって、「本番灯つけまーす!」と言って電気をつける係になったり、制作や装飾の仕事を手伝わせてもらったりもした。自分の役が出番を終えてオールアップしたときは、マネジャーに「明日も現場に手伝いに行っていいですか?」と聞いて却下されたほどだった。最初はあんなに怖がっていたドラマというものが、こんなにすてきな人々の手で作られている。そのことを知って、もの作りに対する考え方が180度変わった。今の高本の目標は、もっと表現力を身につけて、いつかまたこのドラマのチームと仕事をすることだ。
⑩ ひらがなは芝居ができるチームになろう
このRe:Mindの主題歌には、けやき坂46の5曲目のオリジナルソング/それでも歩いてるが使用された。人生とは転ぶもの/膝小僧は擦りむくものなんだ/何度でも立ち上がれよ/俺はそれでも歩いてく/人生とは何なのか?/勝ち負けにどんな意味がある?/生まれてから死ぬ日まで/そうさ それでも歩くこと/だから それでも歩いてる/。それまで彼女たちが歌ってきたような明るく爽やかなアイドル路線から一転して、フォークソング調で人生を歌い上げる奥深い曲だった。この楽曲のイメージに合わせ、センターには大人びた佇まいと強い歌声を持つ齊藤京子が抜擢された。それまで長濱ねる単独か、長濱と柿崎芽実のWセンター体制が敷かれていたけやき坂46で、初めてセンターが代わった瞬間だった。
そのポジション発表は、ドラマの撮影と並行してダンスの振り入れをした際にあっさり伝えられた。スタッフが「じゃあセンター、京子」と言うと、齊藤が「はい!?」とすっとんきょうな返事をしてしまい、ほかのメンバーからクスクスと笑い声が漏れた。けやき坂46らしいのどかなセンター交代だった。また、少し前に加入したばかりの2期生9人のうち、渡邉美穂だけがこのドラマ本編の撮影に参加することになった。このために急遽行なわれた2期生内のオーディションを経て決まったことだった。渡邉は出演が告げられたその日のうちにスタジオに向かい、そこで初めて1期生たちと顔を合わせた。ここから、2期生たちの物語も始まっていくことになる。約2ヵ月に及んだドラマ『Re:Mind』の撮影。
そのクランクアップの日、最後のシーンを見届けるためにメンバー全員が集まった。 撮影がすべて終了した後、渡された花束を抱えたままひとりひとりが挨拶に立った。子供の頃から女優になることが夢だった影山優佳は、「もっともっと大女優になって戻ってきます」と宣言した。メンバー内のまとめ役で、誰よりも長くスタジオにいた佐々木久美は「演技が初めての私たちで至らないところもたくさんあったんですけど、皆さんがほんとに優しくて楽しいドラマ撮影でした。一生の思い出です」とグループを代表して感謝の言葉を伝えた。このとき、メンバーからスタッフに、この2ヵ月間の思いを綴ったノートが贈られた。齊藤は与えられたページ内に思いを書ききれず、別の便箋3枚にびっしり書いた手紙を監督の内片輝に手渡した。
そこには、ワークショップで泣いてしまった後に「ありがとうございました」のひと言もきちんと言えなかったことを、その後もずっと後悔していたという秘められた思いも綴られていた。内片は、当初から「ひらがなけやきは芝居ができると言われるチームになろう」と言ってメンバーたちを励ましてきた。そして彼女たちが真っすぐに努力した結果、確かにそうなれたと感じた。また、芝居において最も大事な相手をよく見るという感覚を身につけてもらうため、ライブでもお客さんをよく見てほしいということも言ってきた。それは結果として、演技だけではなく彼女たちのステージ上のパフォーマンスもレベルアップさせることになる。こうしてけやき坂46にさまざまな成果をもたらしたドラマ/Re:Mindは、メンバーたちの心の中に宝物のような思い出を残し、幕を閉じた。
2⃣ 感想
実は長濱ねる兼任中は週刊プレイボーイを買ったり、立ち読みしたりして全部読んでいたが、それ以降は全く読んでいませんでしたので、知らないエピソードも沢山ありました。でも結局日向坂46を作ったのは長濱ねるなんだなと再認識しました。長濱ねる推しだと公言している上村ひなの(15)は推しメンは勿論長濱ねるのビジュアル後継者ですし、小坂菜緒(16)・濱岸ひより(16)・丹生明里(18)も推しメン候補にしています。本来ならばタイトル記事を書いた小坂菜緒も推しメンにしなければならないが、既に推しメンが制限一杯の3人いますから仕方ありません。柿崎芽実(17)も推しメンにしていますが、長濱ねるが妹のように可愛がっており、実質の長濱ねるの後継者です。本文にもありますが、私が一番心配していた日向坂46唯一の落ちこぼれ高瀬愛奈を救ったのは柿崎芽実のようです。
最後の一人の推しメン影山優佳(17)は明らかな長濱ねるのライバルで、潜在能力は長濱ねるをも凌ぐかもしれません。だからこそ4代目神推し候補として来年4月の復帰を待ち望んでいる訳です。今のところ長濱ねるに続く物語性があるのが影山優佳しか思い浮かびません。流石は影山優佳と言うしかないが、Re:Mindを成功に導いた最大の功労者は影山優佳のようです。大女優になりたいと言った言葉が本当かどうかは分かりませんが、長濱ねるとは一味も二味も違う魅力があります。クイズ対決で長濱ねるに競り勝ったように潜在能力は底知れず、かと言ってカラオケ大会では「あげてけー!」と叫べるノリの良さは誰も真似のできないキャラだと思います。他にも佐々木美玲(19)を推しメン候補にしていますが、長濱ねるが歌もダンスも素晴らしく、しっかりしていると絶賛しているからです。
最後に残った金村美玖(16)は個人的直観で将来のエース候補だと思って推しメン候補にしています。以上が日向坂46の推しメンと推しメン候補ですが、実に8人と箱推しと変わりません。ところが今回の記事を読んで高本彩花(20)を推しメン候補にしていなかったことを少し後悔しています。私の日向坂46メンバーの推しメン決定の判断基準は自分の目と長濱ねるの目と長濱ねるを推しメンにしているかどうかです。高本彩花はねるに初めて会った時に号泣していましたが、ねる推しだとは言っていないがそれ以上の存在だったということのようです。もう20才を過ぎましたので新規に推しメン候補にする訳にはいかないが、長濱ねると同じ欅坂46のオーディションを受けてけやき坂46に加入した唯一のメンバーとして今後は特別な目で見たいが、JJの専属モデルになれたことは大きな喜びでしょう。
日向坂46には長濱ねるに憧れて加入したメンバー等が実質半数以上いる訳ですから長濱ねる由来且つテイストの日向坂46だと言えます。一方、欅坂46は平手友梨奈推しこそ公言しているメンバーは少ないが、少なからずその世界観に憧れているメンバーが多い。つまり、次のシングルからは完全な平手友梨奈の世界観を表現する欅坂46と太陽のような長濱ねるの世界観を引き継いだ日向坂46の戦いでもあります。それは単なる数字だけの話ではなく作品の内容や完成度や世間の反応等の全ての戦いでもあります。私の中の個人メンバーの物語性は長濱ねる卒業の7月に一旦終わり、来年4月の影山優佳の復帰でまた始まると思っています。長濱ねるがソロタレントとして活動を始めればまた新たな物語を紡いでくれるでしょうが、欅坂46と日向坂46双方にとって長濱ねる離脱は痛いだろう。
※令和元年最初の画像はとっておきのツーショットを撮った丹生で、有能確定です。読者の皆さんには平成大変お世話になりましたが、令和も宜しくお願いします。